第02話 識別を免れし者《ノーナンバー》

 ニンフルサグの家に着いてすぐ、マルゥは気を失った。充電が切れてスリープモードに入ったのだ。

 行きに使ったバイクは“識別を免れし者ノーナンバー”のマルゥは乗れない。だからアリスを背負って全力疾走した。バッテリー残量がゼロに近い状態に加えて日も傾いていたため、太陽風の放射線が少なくまともな充電ができなかった。しかしマルゥは止まれなかった。友は生きると言っていた。ならば友のためにまずアリスを生還させねばならない。

 スリープモードが解除されたのは朝日が昇ってからだった。マルゥが目を開けるとすぐそばにニンフルサグの顔があった。


「おはよう。マルゥちゃん」

「おはよう」


 マルゥは膝枕をされていた。


「あ、えっと、なんで?」

「マルゥちゃんのベッドは、アリスちゃんに貸しているからぁ」


 マルゥは起き上がり、ニンフルサグの膝から離れた。


「もしかしてずっと? 太腿、大丈夫か?」

「うん。愛しい我が子を膝枕できて満足よぅ」


 窓から差し込んだ朝日に照らされて、ニンフルサグの笑顔はとても眩しく感じられた。

 状況をニンフルサグに説明した。彼女も電話を使って情報を集めていたようで、くだんのテロ組織やその領袖がアビスと名乗る男であると言うことがマッチした。


「アビスって言えば、昔エンキちゃんからそんな名前を聞いたわぁ」


 エンキとはアヌンナキの一人だ。定住せず、常に歩き回っているらしいことをニンフルサグから聞いたことがある。


「エンキは、今回のテロに関係あるのか?」

「あの人は多分関係ないわぁ。中立だものぉ」


 二人で話をしていると、マルゥの部屋から物音が聞こえた。アリスが起きたのか。すぐさま部屋に向かった。

 床に、ハンカチを落としたように白絹が広がっていた。その上には長い金のざんばら髪。どうやらアリスがベッドから落ちたようだった。目と目が合うとアリスはぎょっとした面持ちになって辺りをキョロキョロと伺った。体が思うように動かないのか、這い蹲ってベッドに上がり、枕を手に取って構える。


「敵じゃない。安心してくれ」


 マルゥがそう言って両手を上げた。相手が持っているのは枕だが、魔法を使えば凶器に成り得るだろう。


「あ、ってーか日本語通じないか?」


 その問い掛けにキョトンとして、それから長いまつげをパチパチとしばたたかせた。アリスはエリアd01の保管施設で眠っていた。ということは、旧イギリスが彼女の故郷になるはずだ。母国語は英語である。


「いえ、通じるわ。どうしてか、わからないけれど」


 彼女は戸惑ったような口調だった。


「アタシも、話せるのね。なぜかしら」


 自分で話しながら驚いているようだった。


「それはあなたがコールドスリープされている間に脳に直接日本語の知識が組み込まれたからよぉ。ラストイニシエーターが覚醒後に混乱しないようにぃ」


 ニンフルサグが答えると、アリスはゆっくりと首肯した。どこかぎこちないのは、知識が組み込まれると言う感覚になじみがないせいだろう。


「アタシは、ラストイニシエーター……。アナタたちは、アンドロイド……新人類なの?」

「そうよぉ」

「新人類の共通言語は日本語なのね。英語じゃないのね」

「ええ。英語は簡単で覚えやすいから旧人類にとっては重宝されるものだったけれど、覚えやすさなんて関係ない新人類にとっては機微を言語化できる方が良かったの。虹の色彩一つとっても英語は6つにしか分けられないでしょう? 日本語だと7つにわけられるんだからぁ、そっちの方が便利じゃない?」


 ニンフルサグに悪意はないと思われる。しかし母国語がけなされたように感じたのか、アリスは少し不機嫌そうな表情になった。視線を逸らし、それからすぐにハッとした。


「アタシ、そう言えば追われていて……アナタが助けてくれたの?」

「そうだ。でもなんで師匠じゃなくて俺だってわかった?」

「記憶の片隅に、アナタの顔が在った。逃げてる最中に見たのかしら……でもなんで助けてくれたの?」

「そりゃあ、ポテトがお前を助けに行くって言ったから」

「ポテト?」

「ん? ああ。お前がコールドスリープされる前にお前の世話をしていたメイドロイド」

「そうなの?」


 首を傾げるアリスに眉をひそめるマルゥ。


「まさか、覚えてねえのか?」

「ええ」

「なんでだよ!」


 つかつかと歩み寄りながら言葉を荒げる。


「ポテトは、お前が目覚めるのを待っていたんだ! 80年もの間。お前らの一生分、ずっと。テロが起きて助けに行ったら、お前は気を失っていて、それでもお前のために盾になることを選んだ……なのに! なんでだよ! なんで覚えてないんだよ! 結局お前にとってポテトはただの小間使いだったってことかよ! そんなやつのためにポテトは盾になったってのかよ! 薄情者! ふざけんじゃねえ!」

「知らないわよ!」


 マルゥの怒りに、アリスは絶叫を上げた。

 お互いに睨み合っている。その間にニンフルサグが入る。両腕を広げ、アリスを完全に隠してしまった。微笑んだまま、ニンフルサグは広げていた両腕を閉じた。思い切り。マルゥの頬目掛けて。


「いってぇえ!」


 鞭を打たれたかのような一撃に、マルゥは膝を突いた。


「なにすんだよ!」

「お・し・お・きぃ」


 まだニコニコしていた。マルゥは恐怖を感じて反論の言葉を飲み込んだ。


「マルゥちゃん。しっかり想像を働かせれば思い当たるはずのことに思い当たらないのはダメよぅ?」


 ニンフルサグはちらりとアリスの方を見る。


「記憶、全部ないのよねぇ?」


 その言葉に、マルゥは驚愕し声も出なかった。アリスは俯き、それから頷く。


「ええ。多分。まだ、あるのかないのかもわからないくらい、整理できてないけれど」


 ニンフルサグはそのままベッドに座り、アリスの背中を撫でる。


「さっき、脳に直接日本語の知識が組み込まれたって言ったわよねぇ。そういう感じで、生きていくうえで必要な知識はすべてインプットされているのぉ。それと生前の個性もそのまま引き継がれているわぁ。だから、アリスちゃんはコールドスリープ前のアリスちゃんと同じなの。でも、記憶はないのよぉ」

「なんで?」

「新人類に恐怖心や憎悪を抱かせないためよぉ」


 ニンフルサグがそこまで言ってマルゥはようやく思い至る。新人類は旧人類をほとんど全滅に追いやって、人類を継承したのだ。アリスはラストイニシエーターに選ばれてコールドスリープされたが、彼女の家族や友達は駆逐の対象になっている。大切な人を殺した新人類が憎くないはずがない。記憶がそのまま残っていれば、起きた瞬間に新人類を殺そうとするだろう。それを避けるために記憶の抹消をしたのだ。そうすればゆくゆく気付いたとしても、家族や友達の記憶がなければ恨みようがない。

 ニンフルサグは、無知を責めたのではない。そこに思い至らない想像力の稚拙さを責めたのだ。叢雲むらくもから切り離されたアヌンナキとその系譜は、事実を知る機会が少ないがために想像力を働かせる力が必要だ。それをずっと教えられてきたと言うのに。


「怒鳴って悪かった。覚えてないんじゃあ、仕方ないのにな」


 マルゥは自分の落ち度を素直に反省した。

 しかしアリスから言葉は返ってこなかった。


「アリスちゃん。全面的にうちの弟子が悪いんだけどぉ、一つだけ言い訳させてね。マルゥちゃんがさっき言ってたポテトちゃんと言うのはアリスちゃんを追って来る悪いやつらから守るために盾になってくれたのぉ。マルゥちゃんはポテトちゃんの思いを知っているから、熱くなっちゃったのぉ。それにしたって混乱しているあなたを責め立てるなんて、絶対に良くないことだけどねぇ。なによりあなたは被害者で、本当に悪いのは襲撃を企てたやつらだものぉ」


 アリスは顔を上げる。


「その、襲撃してきたやつらはなんなの? アタシ、なにか悪いことしたの?」

「ううん。アリスちゃんは悪くないわぁ。そうだ、良かったら襲撃してきた人たちのこととか教えてくれるぅ?」


 それからアリスは促されるまま滔々と語り始めた。

 アリスが目覚めたときにはもうすでに襲撃は始まっていた。自分を目覚めさせてくれた人が言うには、ラストイニシエーターを全滅させようとしている組織がいるらしい。襲撃に気付いて慌ててアリスのコールドスリープを解除したそうだ。その人は足を負傷しており、アリスを外に運び出すことは不可能だと言った。自力でここを出るように言われた。そして外に出たら東へ進路を取ってアヌンナキに会えと言っていた。ここから近いのはニンフルサグだとも。


「その通りになって運が良かったわ」


 だがそれは簡単なことではなかった。すぐに周りを取り囲まれた。アビスと言う男が領袖を務める補完派と言うグループだった。アリスは敵が機械だとわかったので、電気系の魔法を放った。


「あのときの落雷みたいな衝撃は、やっぱり魔法だったのか」


 しかし一瞬相手の動きを止めただけで致命傷は与えられていない。電気への対策はしっかりされているようだった。そこでアリスは風魔法を使って周りを取り囲んでいた連中を吹き飛ばした。散り散りになった敵を各個撃破しようと言う算段を立てたが、それはできなかった。


魔素まそが、なくなってしまったの」

「ポテトが言ってたな。魔法を使うための力だっけ? こう、自然が多い方が良いんだろ?」

「自然が多い方が良いのは間違いないけれど、力ではないわ。空気中に漂っている、魔法の素となる粒子。環境ともいうべきかしら。例えば、燃焼するためには媒介となる木の他に酸素が必要でしょう? 自分の中にある魔力が木で魔素まそは酸素のようなものよ。魔力と魔素まそのどちらかが欠けても魔法は使えないの」

「へえ。でもそれさえあれば、なんにもないところから雷出したり風出したりできるんだからやっぱ便利だよな」

「なにもないことはないわ。雷魔法は近くに電子が一つもなければ使えないし、風魔法だって大気がなければ使えない。ただその媒介が魔力だというだけの話で、そこには道理があるのよ。魔法は化学反応みたいなものなの」


 ポテトに教えてもらった太陽が輝く理由を思い出す。アリスからしてみれば、太陽の方がよほど理不尽な熱源なのだろう。


「道理があるなら、俺も魔法を使えるのか?」

「さあ。アンドロイドがどんな体の構造をしているかわからないからなんとも言えないわ。でも、ライターを使って火を起こせることを考えれば、可能でしょうね。ただ、やっぱりこの辺りも魔素まそが薄いから、使えるようになったとしても連続発動は難しいわ」

魔素まそって見えるのか?」

「見えないわよ。感じるの。酸素だって肉眼で確認してこの酸素を吸おう思って吸ってないでしょ? って、ああ、アナタは呼吸をしないかしら」

「いや、するぜ。って言っても、他の人間はどうか知らんが」


 その答えにアリスは驚いたようだった。ただでさえ大きなサファイアブルーの瞳がさらに大きく開かれた。


「マルゥちゃんにはその機能を付けてあるのぉ。呼吸はエネルギー補充や体を冷ますために使えるんだけれど、効率はそこまで良くないから別に必須じゃないの。でも、世界を旅して、旧人類の文献を読み漁って、武術を扱うには呼吸が大切だってことがよくわかったから、呼吸器官を作ったのぉ」


 バッテリー残量がほぼない状態で太陽が沈んだあとも走り続けてこられたのは、呼吸によるエネルギー補充ができたためである。またオーバーヒートしなかったのも呼吸のおかげである。酸素は酸化を促進させるため多量に内部に取り込むのは推奨されていないが、旧人類と同等程度の酸素量ならピコマシンによる自己修復機能で充分に回復できる。


「アリスが言うように、俺は酸素を見ながら吸ってるわけじゃあねえからな。言いたいことはよくわかったぜ」

「この辺りに流れている魔素まそはとても薄い。生命の誕生や死滅によって濃度は変わるから、そういうものがないのね」

「生命って言えば畑の植物くらいだもんな。俺たち新人類は旧人類の生命の定義からは外れるんだろ?」

「……そう、ね」


 アリスは気まずそうに視線を逸らした。


「別に今さら気にする必要はないぜ。俺だって新だの旧だの区別して言ってんだから」


 マルゥがけらけらと笑うと、彼女は苦笑いを返して視線を戻す。


魔素まそが切れたから走って逃げたんだけど、爆発に巻き込まれて、そこから記憶がないの」


 どうやらそれが四階から落ちるまでの間に起きた出来事だったようだ。

 そのあとはマルゥが自分とポテトの活躍を話した。アリスがアヌンナキを頼るように言われたのは、叢雲むらくもの存在のせいだろうと憶測が立つ。叢雲むらくもは全人類の情報を統括する。ポテトが言うように、通常の人間ではアリスの存在を隠すことは不可能だ。

 とは言えマルゥはアビスに顔を見られている。あそこで名乗っていようとなかろうと、顔認証システムでシリアルナンバーのない人間だと言うのはすぐにバレていただろう。ならばニンフルサグの居場所を特定されるのも時間の問題だ。


「また、アイツらが襲ってくるのかしら」


 アリスの言葉は仄暗く湿っていた。

 ニンフルサグは頭を撫でて、体を抱き寄せた。大きな胸にアリスの顔が埋まる。


「多分、前のような襲い方はしてこないわ」


 補完派の行動は別段バグでもエラーでもない。派閥の中で意見が分かれ行動に移すと言うことはより良い社会体系を生み出すために必要であり、正常な行動である。しかし意見を通すために同胞を殺すことはやり過ぎである。なんらかの罰則を受け、一部コンテンツの使用を制限されることになるだろう。例えば武器の使用ができなくなるなど。そのうえでさらにたった一人のイニシエーターを追いかけたがために周囲の環境を荒らすようなことになれば、新たな罰則を受けることになる。彼らは組織だ。組織が機能不全に陥るような行動は慎むはず。


「でも、ここに居れば絶対に安心とも言い切れないわぁ。アリスちゃんが眠る前と違って警察みたいな機関はないの。彼らを物理的に縛することはできない。だからいずれにせよ、アリスちゃんが恒久的に安全な生活を送るためには、他のイニシエーターたちとも連携を取る必要があると思うの」


「他のイニシエーター……?」

「今回のエリアd01でも相当数死人が出たと思うけれどぉ、解放派は全滅さえしなければいいって考えだと思うの。だから逆にみんなが同じ場所に集まれば、守らなきゃいけなくなるでしょう? それと、アリスちゃんみたいに強いイニシエーターたちが一堂に会したら補完派だって簡単には襲って来られない」

「でも、どうやって会えばいいのかもわからない」

「他のアヌンナキを頼ればいいわぁ。とりあえず東を目指して。途中、ナンナちゃんがエリアd06に居て、ウトゥちゃんがエリアe07に居るからぁ。エリアe15にいるイナンナちゃんには近くのイニシエーターの保管施設を注視するように言っておくわね。その保管施設にはイットウサイって言うとっても強い剣豪がいるのぉ」

「その人がいたら、頼もしそうね」

「ええ、でも刀を持ってないだろうから、途中でエリアe14に寄ってムネチカって言うイニシエーターと会って。その子は刀鍛冶だから協力を仰げば刀を打ってくれると思うわぁ。刀を持ったイットウサイなら武装した100人の新人類が相手でも敵わないわぁ」


 イットウサイの計り知れない力を聞いてもアリスの表情は深刻なままだった。そこに辿り着くまでにどれだけの苦労をするのかを考えているのか、或いはいまだに情況が呑み込めていないのか。

 彼女はゆっくりと頷いて、ベッドから降りた。壁掛けに在った自分の服を見つけて手に取る。


「お世話になったわね。ありがとう。着替えるから、席を外してもらえるとありがたいんだけれど」


 アリスの言葉にマルゥは頷きを返し、踵を返す。


「じゃあ俺も支度してくるわ」

「え」


 空白の代わりに置いたような言葉だった。

 キョトンとした顔に、マルゥはため息を返す。


「お前一人で行く気かよ」

「そうよ。だって、アナタにはアタシを助けるメリットがないもの」

「俺にはねえが、ポテトにはあるんだよ。あいつは、お前と会うために生きるって言ってた。なら危険が伴う旅を一人でさせるわけにはいかねえだろうよ。それにエリアの名前聞いただけでわかんのかよ、場所」

「うっ」


 そこへニンフルサグが追い打ちをかける。


「それに魔物も出るしねぇ」

「えっ? 魔物?」


 固まるアリスを残し、マルゥは部屋を出た。

 自室に入り、クローゼットを開け、戦闘服を取り出す。ニンフルサグに作ってもらった袴と袖口の広い羽織だ。

 それを着て、鏡の前で手を振り上げ、足を前後に動かす。大きな袖は手元を隠し、攻撃の直前まで拳の握りを悟らせない。また袴は足捌きを隠してくれる。動きやすさはつなぎの方が圧倒的に良いが、戦闘に重きを置くなら動きを悟られない服装がベストだ。無手不手ムシュフシュもより完璧になる。今後アビスのような戦闘力の高い人間を相手取ることを考えるとこちらの方が良い。

 それからサバイバル用の道具をいくつかピックアップし、アリスのための食料をウェストポーチに入れた。食料も携帯用の小さなものであればかさばらない。

 ニンフルサグからもらった剣を腰に携える。マルゥの準備はすぐに終わった。

 アリスを迎えに行くより先に、不穏な空気に気付く。


「師匠」

「ええ。マルゥちゃん、地下倉庫から出てちょうだい」


 二人は異変を感じ取っていた。クター粒子が家の付近を覆い始めている。今ここに用があるとすれば補完派の連中だ。そして彼らがクター粒子を展開していると言うことはつまり、叢雲むらくもに伝わってはまずいことをこれからやると言うことになる。建物を破壊するような行為はその後も痕跡が残るためやらないだろうが、不法侵入くらいならするだろう。


「マルゥちゃん、まずはd06へ向かってナンナちゃんに電話を貸してもらって。そこでわたしに電話を掛けて。そうすれば、その先の安全な道を案内することができるわ」


 マルゥは首肯してからアリスがいる部屋へ向かう。

 ——ピンポーン。

 インターホンが鳴った。


「はぁーい」


 ニンフルサグは知らないフリをして玄関の方へ向かう。こちらを振り向いてウィンクをした。

 ちょうどアリスが部屋から出て来た。白地に青いサテンのリボンがいくつも付いた豪奢なワンピース。ふんわりとしたスカートの至る所には縫合のあとがある。ニンフルサグが補修したのだ。

 マルゥは無言でアリスの手を引いた。


「え? ちょ」


 話している時間はない。彼女の口を手で塞ぎ、抱きかかえて地下倉庫へ向かった。

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