ぷぴ22 武力でいかないで
『私は卑怯な者のようにならない。いつでも真っ向勝負だ。私には四天王と彼らを慕う大勢の【精霊】がいる』
「シルヴィーちゃん! 一気に成長をしているぞ」
「体内の消費に気付いてあげて」
自分の掌をさっと見ると赤ちゃんのぷにぷにとした柔らかいものと異なる。およそ中学生くらいにはなっているだろう。このまま戻らないのか、用が済めば戻るのか。悪漢へ向かいながら無駄な考えに染まってしまった。
「隙だらけだのー、おじょちゃん。ほらほら、アタタとサンパも力の差をみせつけてやんなさいねえ」
『ここの家族に触れさせはしない! 去れ』
楽しくお誕生日パーティーでブドウパンを食べていた食卓を背後にし、侘しささえ感じ入る。足を重たい空気が覆う。少し進むのに手でもがいても厳しい。
『重さを剥ごうぞ! 【シルフ】よ、風の通りをよくしてくれ給え』
背後から短く唱えて仕上げに風を吹かれた。
≪フ、フ、フ――!≫
ほんの一息で私の周りを囲っていた重たさがなくなった。動きやすい。するっと悪漢のずんぐりむっくりのサンパなど動きはスローモーションに見えた。
『サンパと名乗る悪漢は己か?』
「サンパだが。こちらがアタタ。本名は知れないぜ。俺たちゃ三人でロゼ島中の幸せと財産を奪って回ると決めたのだから」
聞いてないのに喋るのって弱いんだが。
「アタタはルンルン様に見込まれての力持ちや」
「ルンルンはねえ、財産的価値のあるものを見極められるの」
ただの欲張りだろ。
「結局はルンルン様の審美眼にかかっている俺たちゃルンルン一派だぜ!」
「一派だぜ!」
『遠慮なく、向かわせてもらう。【シルフ】のお陰で動きやすくなった』
≪【サラマンダー】は結界を張ります≫
申し訳ないがまーまとぱーぱはこれで安全だ。
「シルちゃん、駄目!」
「三つ目の力を解いたらいけないんだ。人は言葉で解決していかなければ。僕達に太陽を教えてくれたのはシルちゃんだろう? 太陽はいつか北風に勝てるからな」
サンパの真ん前にきたところ、影が動く。結界を張ったはずなのに。
「駄目だってば……」
私の前に倒れ込んだのはまーまだ。切れ切れに声を漏らして立ちはだかろうとしている。泣き腫らした面は見てはいけないもので、私の戦意が削がれた。
『まーま……。ほうっておくとこちらがやられる。産まれて間もなくのあの日、酷い目に遭ったのは忘れないだろう』
「まーまは赤ちゃんシルちゃんの判断力が落ちていると心配しているんだよ。いつもと様子が違うよ」
『確かに力で負けないとは思ったけど』
「だ……だめ。やめてね」
『考え方を変えてみるよ。殴る蹴るをしなければきっとお互いにとっていいことになる』
私なりに柔らかい方法で痛い目に遭ってもらおうか。
「ホホホホ、ルンルンを恐れてのことね」
「ルンルン様はお強いですからな」
「お強いですよ。ルンルン様」
囃し立てるために三人が固まった。よし、チャンスだ。
『ピンクのリボンよ、【シルフ】の力により銀髪を後ろへなびかせ給え』
ゴッ――。風が心地いいくらい強い。だが、後ろのまーまとぱーぱが飛ばされてしまった。
『額にあるオリオン銀の三ツ星よ、第三の目を開眼し給え――! 額にある三つの点よ輝きて、第三の目を開眼せよ!』
ピンクの目がズズズズと隆起し、二つの目と合わせて、トライアングルの線が額の上空においてピンク色で結ばれる。私はトライアングルを掴むように額の上から相手へと投げる。両手で輪投げ状態だ。
『トライアングルにピンクのリボンの穏やかな力そ添えてルンルン、アタタ、サンパを捕縛せよ――!』
上手くはまった。ガタタ、ピシイ……。リボンが長く伸びてぐるぐる巻きにし、パンと締め上げて動けないようにした。
『【ウンディーネ】! 【サラマンダー】! 【シルフ】! 【ノーム】! 四大【精霊】達よ、最大の力をもちて森の奥深くに捨て給え』
入ってきたドアからお帰り願う。
『大っ嫌いだもん! ぷーだもん!』
ぷっとまーまに吹かれてしまった。
「どうしたこうした、シルヴィーちゃんも【精霊】を従えていたとはいえ、ほぼ一人で戦った感じかな。僕達は戦いは避けろといったけど、結局お縄にして裁きを待つ形か」
『でちゅか』
プークスクス……。
ぶはっは……。
『でちゅかは出てちまったんでちゅよ』
「いいと思うわ」
『でちょう? だって赤ちゃんなんでちゅから』
私は掌を見詰めた。
『ぷにぷにの掌でちゅね。なんの苦労も知らない感じでちゅ。まーまにもぱーぱにももうちわけない』
「そんなことないわよ。シルヴィーちゃんがいなかったら、誕生日が一つ減るのよ」
「おかしな話だが、お誕生日会なんてできないんだって」
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