14歳に戻った

クライングフリーマン

14歳のことだった。

 14歳のことだった。

 同級生の仲良しのMとY、3人で、京都日帰り旅行に行った。

 行程は、旅行好きのMに任せた。

 京都駅前のバスターミナルで、1日市内観光で京都市内を回った。

 僕は聞いていなかった。Mにもバスガイドにも。他のことで気が散って、耳に入らなかった。後でそう思った。

 バスは、交通事情で遅れていた。

「さあ、お昼にしましょう。」とバスガイドが言った時、初めてしまったと思った。

 前に寄った観光地で観光した後、丁度12時10分前で、「早弁」してしまった。

 同級生達は、何も止めようとしなかった。

 僕が大食いだと知っていたから。

「お昼の時間」は結局、1時10分前だった。

 後のことは、正直あまり覚えていなかった。

 舞妓さんや芸者さんは見かけなかった。

 後で、そんなもんだと知った。

 清水寺のことは、よく覚えている。

 石段は広いが、段数が多い。

 見かねて、同級生が途中の茶店に寄り、饅頭を食った。

 夕方。予定より1時間半遅れて京都駅前に到着。

 霧雨の中、予定通り京都タワーに向かったが、15分位しかいられなかった。

 帰りの電車の時間があったからだ。

 今の「業界用語」で言う「けつかっちん」だ。

 帰宅後。お土産を置いて、夕飯を1人で食べた。

 もう「お風呂タイム」だった。

 あまり面白くない小旅行だったが、一つだけ収穫があった。

 Yが「ソーイングセット」を買っていたので、僕も買った。

 Yは「父子家庭」だった。弟達の「繕い物」は、彼の仕事だった。

 その「ソーイングセット」は今も持っている。

 57年前の「ソーイングセット」を。ボロボロだし、他のもあるのだが、繕い物の時は、それを使ってしまう。

 もう「糸通し」に糸を通すのもまともには出来ない。

「カン」である。

 あのバスガイドは、運行が遅れたことを何度も詫びていた。

 ごめんなさい。意地張って。

 君が悪かったんじゃない。運が悪かったのさ。

 ―完―

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14歳に戻った クライングフリーマン @dansan01

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