【サイドストーリー】JO視点

「俺」は何を見たのか


【俺の仕事は“演出”だった】


俺の名前はJO(ジェイ・オー)。

チャンネル登録者15万人。ホラー、心霊、都市伝説、怪談、何でもありのインフルエンサーだ。

怖がって逃げる奴より、「冷静に分析する」俺のスタイルがウケている。


最初は軽い気持ちだった。

ゆみの配信がバズったと聞いて、数字を見た。正直、演出っぽい。

「コラボしない?」と連絡が来た時、「バズる波に乗っておこう」程度の話だった。


でも、俺は気づいてなかった。

その“波”が、本物の潮流だったってことに。




【あの場所に立った時】


例の公園。ゆみの動画で見た時は、「よくある心霊テンプレ」と笑った。

昼間に下見もした。何もなかった。

でも——深夜2時。カメラを回して入ったその場所には、

昼とはまるで違う“空気の質”があった。


異常な静けさ。風が音を持っていかれる感じ。

まみが冗談を飛ばしても、ゆみがはしゃいでも、俺の中には妙な圧が残っていた。


そして、あの道。

いつの間にか出来ていた“獣道”。

あれを見た時、俺の脳は警告していた。

行くな。戻れ。ヤバい。


でも、カメラが回ってる以上、引けなかった。



【“あの瞬間”のこと】


御堂を見つけ、探索開始。

割り振りで、俺は外を散策。

懐中電灯を手に、軽い気持ちで歩いた。


——そこで、見つけた。一本杉。

見上げればあの鉄杭が刺さった木。


最初はテンションが上がった。

「おい!すげぇもん見つけたぞ!」

演出のテンションで叫んだつもりだった。


——なのに。


次の瞬間、俺の中に“何か”が流れ込んできた。


——喉が勝手に動いた。

——声が勝手に出た。


「せんと…樹の下に入ろう、ゆみ!」


自分の声じゃなかった。

脳は「やばい」と叫んでいたのに、体は勝手に言葉を発していた。


そして——叫んだ。


まみがカメラを向けていた。

ゆみは震えていた。


俺は、自分が何をしたのか覚えてない。




【その後】


気がついたら、俺は車を運転していた。

まみとゆみは無言だった。

GPSもおかしい、道も不明。だが、それでも帰れた。


いや——帰されたのかもしれない。


あとで配信アーカイブを見た。

俺の顔が、別人だった。

まるで、寺の住職の動画と同じ顔だった。


——あの時、“誰か”が俺の中にいた。




【今、俺は——】


あれ以来、配信は減った。

あの出来事について、表では触れない。

でも一部の古参リスナーは知っている。


「JOさん、あの時…なんであんな顔してたんですか?」


DMも来る。コメントも来る。


時々、思い出す。

体の芯が冷えて、目の裏がズキッとする感覚。


そして——今でも、夢に見る。


あの木の下から、何かが俺を見上げてる夢。


「せんと…樹の下に…」

——また、俺の声じゃない。

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