Chapter16 首相官邸②

。       コトブキ


眉間に皺を寄せたまま、首相は溜息を吐く。


「そんなことをして、何の意味が?」


ハタノは指を放さない。


「そんなことをして何の意味が、ですか。あなた方ヒトが、マレビトにしてきたことでしょう?」


首相はハタノから目を離さない。


「昔の事でしょう?今はそんな時代じゃありませんよ」

「昔ねえ。じゃあ、この先の話をしましょうか。後、1000年、いや930年後、この国の形って、どうなっているんでしょうねえ」


首相は、ハタノに掴まれた指を引き抜こうとする。

 

「指を放しなさい、マレビト部隊借用の話じゃなかったのか?」

「そうでした」


ハタノは、首相の手を放す。


「それではその件に関してお答えを」

「本当に我々に指揮権はないんですよ。彼らを法律的な存在証明が出来ない。それは存在しないと一緒ですよ。なので、言わば同盟関係です。マレビトはヒトを殺せないが、それ以外の事は出来る、命を掛けるような対テロ作戦や救助なら最適の存在だ。1、2度死んでもケロッとしている。我々の要請に対して、条件が合えば受けてもらう」

「自衛隊では、マレビト部隊の隊員の存在を、どこまでの階級の方が把握されているんですか?」

「幕僚長と陸将、それに別班を仕切る陸自一佐のみです。陸自との同時作戦の時は、特別班を編成します。兵服での作戦行動の時は、彼らには赤い腕章を着けてもらいます」


ハタノは首相の指から手を放す。


「分かりました。私が直接会って交渉する事は出来ますか?」

「それくらいは、こちらでセッティングします、追って連絡します。ああ、そう、さっきの話、マレビトはどこから来るって話、マレビトはどこかから来るのですか?」

「女に会うんですよ」

「女?」

「そう、女に千年の命を貰うんですよ、そうだ…」


ハタノは、ふと、疑問に思った事を首相に質問する。


「最初のひとりはなぜそんなことをやろうと思ったんでしょう」

「本当にこう言っていたそうですが、“気まぐれ”と言っいていたそうですよ。後、地震の時に自衛隊の活躍を見て、単純にプロの能力を身に着けたいと言っていたようです。ほら、あなたがさっき話した、関西の地震で唯一現れたマレビトですよ」

「名前は?」

「我々はコトブキと呼んでいます」




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