Chapter24 道央自動車道E5

          道標


コトブキとモリオは東京から持ってきたシルバーのセダンで、旭川にある聖慈愛病院へと高速道路を走っていた。モリオは運転をしながら、コトブキに問いかける。


「聖慈愛病院のヘリポートは、札幌と旭川、どちらにもあるのに、何で旭川と思った?」

「ハタノとカスミはグルや、ハタノを乗せたヘリで鏡子をピックアップして、病院のヘリポートで降りて、東京まで連れて行く気や」

「答えになっていない。何故、旭川なんだ?ヘリなら札幌まで行ったほうがいいだろう?」

「旭川の慈愛病院から旭川空港まで車で20分、札幌の病院から新千歳空港までなら50分、空港に近い旭川を選ぶ」

「飛行機の運航時間を調べる」


モリオはスマフォを取り出す。


「バカ、プライベートジェットぐらい用意してるわ、鏡子を拉致してるんやぞ。大人しくゲートに並んで乗る訳ないやろ」

「じゃあ、旭川空港に直接行った方がいいんじゃ?」

「病院で抑えられるなら、そうしたい。空港では暴れたくない」


そう言って、ケースから取り出したチタン製の手甲を付けるコトブキに、モリオが興味深げに話し掛ける。


「何それ?」

「忍者みたいで、ええやろ?マレビトは殺傷能力の高いものはヒトには使えん。銃はもちろん、アミーナイフなんかもそうや、だからコレ」


チタンを被った拳をモリオに見せる。


「こんなもので殴っても精々、鼻の骨が折れるくらや。鼻の骨が折れても死にはせん。それと…」


と言って、コトブキがペットボトルを掴んで窓を開けて、車外に腕をだすと、ペットボトルが破裂すると、モリオはワッと声をあげる。


「握ると1秒間に4万回の振動を起こす。一瞬で血が振動で沸騰して気絶する。使う側もその振動で気絶する。おれはコレに5秒耐えられる。試して見るか?」


モリオは怯えたような目をする。


ハタノが乗るヘリが、コトブキ達の車の上を飛んでいる。

ハタノは機械式の双眼鏡で、高速道路を走る車を見ている。

同じようなシルバーの車を見つけてはナンバープレートをみる。双眼鏡の中に様々な文字が出ては消える。ひとつの車にセンサーが掛かる。

品川ナンバー。

ハタノは声をあげて喜ぶ。


「おお、いた。札幌は無しだ。鏡子をピックアップしたら、旭川にいってくれ」


パイロットに声を掛けるハタノ


「札幌にはカスミ御大が待っているんだろう?いいのか?」

「いい、現場の指示は任されている」


コトブキの予想は外れていたが、ハタノはコトブキの進路に合わせた。


「道標」


ハタノはそう呟いた。

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