Chapter23 稚内市内

     サフィールホテルBAKKAHAÑ 

 

「人の出入りが多い方が目立って安全や」


そうコトブキに言われて、ホテルのロビーでコトブキが来るのを、鏡子とモリオはコーヒーを飲んで、待っていた。

前触れもなく、モリオのスマフォが鳴る。


「おう、早かったな。どこ?前?ああ。わかった」


モリオはスマフォを切り、鏡子に向き直る。


「車が東京から来た」


鏡子は飲み終わったカップを持ちながら外を見ていた。


「レンタカーにすればよかったじゃん」

「コトブキが嫌がったんだよ、レンタカーは」


モリオの目線に恰幅のいい男が目に入る。モリオの仲間だ。

モリオは立ち上がって、鏡子に背を向け、わざわざ東京から悪かったなと言いながら男を手招きする。

男もサッと手を挙げたとたんに、あっ!と言って、その手で、モリオの後ろを指さす。


鏡子が簀巻きにされて、7、8人のカラスに、祭りの神輿のように担ぎ上げられて、連れ去られていた。


モリオと仲間ほ男は慌てて追いかけようとするが、逃げるカラスの中から2人離れて、麻酔銃をモリオ達に数発撃つ、モリオの仲間の男に当たり、男は白目をむいて崩れる。

慌てて物影にかくれるモリオ、その間にカラスと鏡子は見えなくなった。

呆然とたっていると、薄いアタッシュケースを持ったコトブキが側にくる。


「何やっとんぞ」


モリオはバツの悪そうな顔をする。


「ごめん」


コトブキは溜息を吐く。


「スマフォを出せ、早く出せ、いいから出せ」


モリオからスマフォを受け取ると、コトブキは、北海道、聖慈愛病院、と検索する。

札幌と旭川に病院はあった。

旭川をタップしてスワイプしている時に、オホーツク海の北極海寄りにポッカリ空いたマップに違和感を覚え、ワイドにするとコトブキは画面を見て驚く。


太平洋の先にアメリカ大陸がない。


「あれ?アメリカ?んん?アメリカ?」


と、思った次には、その事がフェードアウトする様に頭から離れた。


少しずつ何かのズレに気づき出すコトブキだが、それほど気にも留めない。


「それはさておき旭川やな。車を出せ」


モリオは慌てて車を取りに行く。

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