第7話

 その日の彼は夜遅くに帰った。


 部屋の明かりをつけると、時刻は既に午後9時を過ぎていた。



 彼は上着を投げ捨て、水槽に目を留めた。


 水槽の中では、蝶が大人しくしており、羽を開いたり閉じたりしていた。


 彼は前日と同じように、砂糖水を与えた。

 蝶はそれを餌だと理解したのか、今度は自分からペットボトルの蓋に近づくようになっていた。



 砂糖水を吸い取っているうちに、彼はある考えを思いついていた。


 もし蝶を部屋に放てば、小鳥と同じように部屋を飛び回るのではないか。


 その姿を見てみたくなった彼は、水槽の蓋を開けることにした。


 すると、蝶は勢いよく外に飛び出し、天井に向かって上昇した。


 蝶は部屋の照明に近づき、その周りをひたすら舞っていた。



 彼は上を飛び回る蝶を眺めながら、その美しさに見とれていた。


 真っ白な蝶が逆光を浴び、影絵のように浮かんでいた。


 そのコントラストは、人の手では作り出せないかのように精巧で、ほとんど完璧に等しかった。

 

 彼は口を開けたまま、まるで神々しいものを見上げるかのように、モンシロチョウをひたすら観察していた。

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