第3話

 夕方頃、彼はいつも通り帰り道を歩いていた。


 春を迎えたためか、外は日が暮れ始めても暖かかった。



 仕事に疲れていた彼は、ぼんやりと夕暮れを眺めていた。

 すると、白い蝶が再び彼の前を通り過ぎた。


 それは、昨日と同じモンシロチョウだった。

 蝶はひらひらと舞い、昨日と同じタンポポに留まった。


 その蝶は羽を開いたり閉じたりしながら、長いこと蜜を吸っていた。


 彼は立ち止まり、その様子を狂ったように見入った。


 蝶は満足したのか、やがてタンポポから離れ、向かい側へ飛び去っていった。



 美しい羽に、白いカーテンレースがはためくような動き。

 彼はすっかりモンシロチョウに興味を抱いていた。


 彼はその蝶を、どうにかして毎日見ることはできないかと、そう考えるようになっていた。


 彼の中で、ふとある考えが浮かんだ。

 彼は何かを決意した表情を浮かべながら、いそいそと家に帰った。

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