パート8: 嘲笑と孤独、村八分の少女

次の日から、村の空気は明らかに変わった。

私が夜中に森へ入ったこと。

そこで倒れていたこと。

そんな噂が、どこからともなく広まっていた。

もちろん、私がスライムを食べようとして、その毒にあたったなんて真相は誰も知らない。

ただ、「エルナはやっぱりおかしい」「穢れた森に入った罰当たり」「外れスキル持ちの変人」という部分だけが、尾ひれをつけて増幅されていた。


道ですれ違う村人たちは、私を見ると、あからさまに顔をしかめて避けていく。

まるで、汚いものに触れたくないとでも言うように。

前までは、まだ憐れむような視線もあった。

でも、今は違う。

そこにあるのは、明確な敵意と軽蔑だけ。


子供たちの嘲笑は、もっと直接的だった。


「あ、森のバケモノだー!」

「外れスキルのエルナー!」


遠くから石を投げられることもあった。

幸い、当たることはなかったけれど、そのたびに心が凍りつくのを感じた。


家の中でも、安らぎはなかった。

父さんも母さんも、私を心配してくれているのは分かった。

でも、どう接していいのか分からない、という戸惑いが痛いほど伝わってきた。

食卓での会話はほとんどなくなり、重苦しい沈黙だけが流れるようになった。

きっと、私を庇うことで、自分たちまで村で孤立することを恐れているのだろう。

それは、仕方のないことなのかもしれない。


私は、ますます自分の殻に閉じこもった。

必要最低限以外は家から出ず、誰とも目を合わせず、話しかけられても(そんな奇跡はもう起こらなかったけれど)小さく頷くだけ。

感情を顔に出さないように、心を無にするように努めた。

そうしないと、壊れてしまいそうだったから。


(もう、いいんだ…)


心の中で、何度もそう繰り返した。


(どうせ、私なんて…)

(何をしても、何を願っても、無駄なんだ)

(この村では、私はいないのと同じ…)


諦め。

それは、冷たくて重い鉛のように、私の心に沈んでいった。

モンスターを食べたいなんて、馬鹿げた夢だった。

スキルが役に立つなんて、ありえない期待だった。

もう、何も望まない。

何も期待しない。


ただ、息を潜めて、この灰色の村で、時間が過ぎるのを待つだけ。

それが、今の私にできる、唯一のことだった。


周りからは、完全に孤立していた。

まるで、透明人間になったみたいに。

誰も私を見ようとしない。

誰も私に話しかけない。

かつて「祝福」と呼ばれたはずのスキルは、私を村八分にするための烙印に変わってしまった。


深い、深い孤独。

その底で、私はただ、じっとうずくまっていた。

反論する気力も、逃げ出す勇気も、もう残っていなかったから。

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