第2話 風柳翠


 わたしの名前は青葉風千穂あおはかぜちほ、高校卒業後すぐに事故に遭い亡くなってしまった。

 でも……わたしの人生はそれで終わりではなかった。

 別の世界に生まれ変わった。

 現在の名前は風柳翠かぜやなぎすい

 鏡越しに映る新しい自分の姿は黒髪とエメラルド色の瞳の幼女。

 将来美人になるんだろうなってそんな感じだ。

 

 後ろを駆けて行った黒髪の少年は、いまのわたしにとっての兄・修弥しゅうやだ。


 鏡に映ったわたしの表情が曇った。

 いま暮らしている国・蒼音葉あおおとは国が遠くない未来に滅びてしまう可能性があることをわたしは知っていた。


 というのも……この世界は前世でわたしがプレイしたことがあるゲームの世界。

 【月下げっか笑顔えがお魔狩まかり】

 の世界なのだ。


 月下の笑顔に魔狩りは、携帯電話が発売されるより以前のころの日本に似た雰囲気を持つ蒼音葉国を舞台に、日常の裏で退魔師と魔物が戦い合う世界観を描いたゲームソフトである。

 またゲームジャンルは、シミュレーションRPGとアドベンチャーゲームの要素で構成され、エンディングは複数存在する。

 うち一つは主人公が闇落ちする蒼音葉国滅亡ルートだ。


 ほか二つのルートは、主人公を無事闇落ちさせることなくクリアすることができた際にみることのできるエンディングとなる。

 仲間キャラクターから犠牲者がでてしまった場合はノーマルエンドへ進み。

 ハッピーエンドを迎えるためには、仲間キャラクターから犠牲者をださずにクリアする必要があった。

 

 わたしは両頬を手で叩いた。


 でも実際のところは、ハッピーエンドだとしても一章で亡くなるあのキャラクターや、二章で犠牲になってしまうあのキャラクターなど、犠牲となるパーティー外キャラクターは複数存在する。


 わたしは彼らのことを救いたいと願ったことがあった。


 

「……わたしだけのハッピーエンドを目指してみせる」




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