雷撃の後に ── トウカ 視点 ──
「お兄ちゃん!?大丈夫!?」
謎の装置から打ち出された純白の雷を受けたお兄ちゃんに、私はそう呼びかける。だけど、お兄ちゃんは右腕のあったあたりを押さえながら痛みによるものであろう苦痛の声をあげていて、私の声が届いた様子はない。
── 一体何が……って今はそれどころじゃない!早く回復を……!
そう判断した私がお兄ちゃんに駆け寄ろうとすると、突然お兄ちゃんが動きを止める。
「──
そして、お兄ちゃんのものではない感情のない声がお兄ちゃんから発される。
「お兄、ちゃん……?」
「ノア君……?どうしたの……?」
その様子に、私とミリアさんは声を漏らす。
「……失敗しました。再挑戦します。」
お兄ちゃんの明らかな異常に私たちが動けないでいる間にも、お兄ちゃん、いや、お兄ちゃんと入れ替わった"何か"はそう言葉を発している。
「── ノア!大丈夫!?」
「!」
するとその瞬間、森の奥から二つの人影が飛び出してくる。
── 片方は、私と同じくらいの身長で、頭から虎の耳を生やした紫瞳に白髪の少年?だった。そしてもう片方は……。
「アカネさん!?」
何と、さっきのダンジョンで出会ったアカネさんだった。赤い髪と瞳の人の姿をとっているけど、その気配は間違いなくアカネさんのものだ。思ってもみなかった存在の登場に、私は思わずアカネさんの名前を呼ぶ。
「む……?この声は……トウカか!」
「どうしてここに……?」
「"あやつ"の気配を感じたからじゃ。」
「"あやつ"……?」
「……時間があれば説明したかったが、生憎今はそれどころではない。それより、何があった?」
「えーっと、突然あの装置が光ったかと思ったら、真っ白な雷が飛び出してきてお兄ちゃんの右腕を消し飛ばしたんです。それで、しばらく痛みで叫んでたかと思ったら突然静かになって、知らない人の声で喋り出して……。」
「なるほどのう……。……"あやつ"め、この世界にどこまで干渉する気じゃ……?」
私が状況を説明すると、アカネさんは納得の声をあげた後、小さくそう呟く。
「ノア……じゃなくてノアのスキルさん!僕も手伝うから、とりあえず"琥珀"出して!」
「?……了承。」
その間にもう1人の方がお兄ちゃんに何かを話しかける。聞こえてきた感じだと、今お兄ちゃんの身体を動かしているのはお兄ちゃんのスキルらしい。そのスキルさんは指示に従って虚空から新しい方の刀を取り出す。
「それじゃあ、今から僕がその異常を動かすから、僕の指示通りに ──!?」
「!?……主様の干渉を確認……。原因、不明。」
それを確認した少年?が指示を出そうとすると、不意にお兄ちゃんが動き始める。スキルさんが動かしたわけではないみたいだ。
「……対象、確認。」
お兄ちゃんは刀を左手だけで腰だめに構えると、何かを小さく呟く。
「ノア!何を……!……まさか!?」
「……演算、完了。」
徐々に黒い靄に覆われていく刀を見、少年?は目を見開く。
「駄目!今それを撃ったら……!」
「讎ょソオ遐エ螢、万物切断、同時発動。」
そしてお兄ちゃんを制止しようとする彼?だったが、それよりも早くお兄ちゃんが何もない空に向けて刀を振るう。
── すると、空に向けて飛び出していった靄によって形作られた黒い刃が、何処かへと消失する。
「……着弾、確認。」
「ノア!しっかり!……朱!」
「分かっておる!トウカよ、少し身体を借りるぞ……!」
「え?」
そして何かを呟いた後その場に倒れそうになったお兄ちゃんを、少年?が支える。そして彼?の言葉に頷いたアカネさんがそう言うのと同時に、私の身体が勝手に動き始める。
(何、これ……!)
私は思わずそう声を漏らすものの、それが音になることはない。
「白、そっちは頼むぞ。」
「分かってる!」
「……"
そしてアカネさんがそう唱えると同時に、お兄ちゃんを真っ赤な炎が包み込む。しかしその炎はお兄ちゃんの身体を焼くことはなく、むしろ傷を癒やしていく。
「……そろそろ、限界、じゃな……。」
しかしお兄ちゃんの腕が再生したところで、不意にアカネさんがそう口にする。そして身体の制御が戻ってきたかと思うと、突然身体が一気に重くなる。
「……とりあえず ── が、後は ──。」
「分か ── ばら ──。」
そして2人は何かを話した後、ミリアさんとレオンのもとに歩いていく。私もその後を追おうとして、そのままその場に倒れ、意識を失うのだった。
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