四神の箱庭 ⑥

「ここは……戻ってきたのかな?」


転移特有の浮遊感の後、僕は像の置いてあった部屋に戻っていた。


「あ!来た!」

「やっと戻ってきた……。」


そんな僕の姿を確認し、ミリアとトウカはそんな声をあげる。


「ごめんね?だいぶ待たせちゃったけど……。」

「ううん!30分くらいだったから、大丈夫だよ!」

「……え?」


僕の感覚が正しければ2時間は待たせてしまったはずだ。そう思って僕が謝ると、ミリアから予想だにしていなかった言葉が発される。


「ミリア、今、何て……?」

「え?30分くらいだったから ──」

「そこ。……え、それ本当?」

「うん。」


そんな僕の様子に、トウカがふとこんなことを聞いてくる。


「あー、お兄ちゃん?多分お兄ちゃんも飛ばされたんだよね?」

「うん。」

「どうもあの空間、こっちよりも時間の流れが遅いみたいでね?私も向こうに10分くらいいたんだけど、こっちだと2、3分しか経ってないみたいだったんだ。」

「……あー、まあ納得はできるね。」


そんなトウカの言葉に、僕は納得する。神格ならそれくらいのことができても不思議じゃないもんね。だけど、せめて先に教えておいて欲しかったなぁ……。


「……あれ?ノア君って、そんな刀持ってたっけ?」


僕が少し遠い目をしていると、僕の手に持っていた"琥珀"に気づいたのか、そんなことを聞いてくる。


「さっき貰ったんだよ。……あ、そうだ。」


先ほど"琥珀"これを貰った時に、ステータスが変化した、というアナウンスが流れたことを思い出した僕は、ステータスを確認する。


─────── ノア゠シスト ───────

種族 人族

天賊ギフト 刀聖 LV 54

HP 72,498/72,498

MP 234,561/234,561

ATK 114,673

DEF 62,943

DEX 167,450

POW 103,756

スキル 威圧、隠蔽、讎ょソオ破螢、雷魔法、鑑定、共鳴、時空間魔法、重力魔法、精霊視、精霊同調、精霊魔法、全状態異常無効、繰糸術、超回復、万?黄蛻?妙、魔導、魔導書、立体機動


特殊スキル 桜花流刀術、白虎の咆哮


契約精霊 アルノー=リストリア


称号 蜈ャ辷オ螳力縺ョ逾樒ォ・

   雷の神髄に至りし者

   精霊王の盟約者

   白虎の親友


加護 白虎の加護(幸運、紫電、退魔、保護)

────────────────────


── すぅ……。うん、ナニコレ?ただでさえ以上だったステータスが軒並み上がってるんだけど……?しかもなんか知らないスキルやら称号やらも増えてるし、何よりこの「加護」って何!?僕何も知らされてないんだけど!?


僕は内心動揺しつつ、新しく増えた項目の詳細を調べる。


[白虎の咆哮]……使用者と対象者のPOWを比較し、使用者のPOWの方が高かった際、対象者に恐怖(大)の状態異常を付与する。さらに、使用者のPOWが対象者のPOWを250以上上回っていた場合、対象を気絶させる。


[白虎の親友]……白虎と親友になったものに与えられる称号。ステータスが上昇、動物や魔獣と仲良くなりやすくなる。


[白虎の加護]……白虎が気に入った相手に与える恩恵の総称。基本的に対象にとってプラスになるものが与えられる。

幸運:対象の運が上昇する。

紫電:雷魔法の威力が上昇する。副次効果として、魔法の色が紫色になり、雷魔法への耐性を獲得する。

退魔:モンスターに対して与えるダメージが上昇する。

保護:詳細不明。


……うん、分かっちゃいたけどどれもとんでもないね。というか、ステータスでこれってなると、"琥珀"は……?


[神賜刀・琥珀]……かつて白虎が自身の子孫に与えた刀。神の紫電の力を内包しており、所有者の雷魔法の威力を上昇させる。また、一定量の魔力を流すことで刀身に紫電を纏わせることも可能。一度喪われたが、白虎により再生された。所有者の全ステータス+10%、雷魔法の威力+20%、雷魔法使用時の消費魔力-15%。契約者 ノア=シスト


……一周回って驚かなくなってきたよ。風流以上に壊れてるじゃんこれ。まだステータスの上昇だけならわかるよ?でもさぁ……。……なんで刀なのに魔法の威力も上がるの……?


「お兄ちゃん、大丈夫?」

「また何か思い出しそうなの?」


すると、トウカとミリアが心配そうな声色でそう声をかけてくる。どうやら、無意識のうちに顳顬を抑えていたようだ。


「大丈夫だよ。ちょっと貰ったものが凄すぎて頭が痛くなっただけだから。」

「そう?ならいいけど……。」

「ちなみにどんな感じで凄いの?」

「まず、ステータスが軒並み上がるでしょ?次に称号が増えて、最後に、なぜか魔法の威力が上がる大業物を貰った感じかな。」

「えぇ……。本当に何があったの……?」


僕がミアの問いに簡潔に答えると、その内容を聞いたトウカがそう声を漏らす。


「それは ──」


僕があの空間であったことを話そうとすると、不意に僕の"魔導"の索敵に反応が生じる。


「これは……ッ!?」


その反応を詳しく調べようとした僕は、とあることに気づくと同時に、思わず顔を強張らせる。


── この反応、あの時・・・の……!


「お兄ちゃん?」

「……皆、聞いて。緊急事態。」


僕はトウカの問いかけに答えることもせず、皆に呼びかける。


「いま、ここから大体10kmくらいのところに不自然な反応があった。もしかすると……7年前と同じことが起こるかもしれない。」


その僕の言葉に、ミリアは息を呑み、トウカとレオンは僕と同じように顔を強張らせる。


「七年前って……!?」

「まさか……!?」

「また人為的な異常発生イレギュラーが……!?」


そんな三人の言葉に、僕は頷く。


「とりあえず、急ぐよ。」


僕はそう言って、ダンジョンの出口へと駆け出す。


「待って!転移をすれば ──」

「もう始まってるから、止められない。」


そんな僕にミリアはそう提案するが、僕はそれを却下する。


「……だから、道中のモンスターも、できるだけ討伐していこう。」


そうして、僕たちは反応のあった地点へと駆け出すのだった。

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