氾濫③

── これは……なかなか強めのやつが出てきたな……。


ダンジョンから現れたモンスター達を"視て"、ばくはそんな感想を抱いた。


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名称 鬼ノ王オーガキング


HP 18,685/18,685

MP 5,685 / 5,685

ATK 24,681

DEF 24,681

DEX 19,689

POW 18,659

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スキルに関しては特に視る必要もないかなと思ったから視なかったけど、結構高いステータスしてるよな、こいつ。だけど……。


僕は全く動きを感知させない動き方で鬼ノ王に近づき、そのまま胴体を袈裟斬りにする。鬼ノ王は何が起きたのか認識することなく、胴体から2つに分かれて絶命する。


── こっちはこれでよし。残りの1体は残りの人たちがやってくれると思うから……。……僕はこっちだな。


鬼ノ王に続いてダンジョンから出てきたその黒い影を視つつ、僕は気持ちを切り替える。


─────────────────────

名称 黒竜


HP 25,683/25,683

MP 14,872/14,872

ATK 58,963

DEF 42,864

DEX 28,696

POW 35,698

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── うーん、前から思ってたけど、そこそこ強いよね、この黒トカゲ。あのダンジョンの下の方のボスをやってたわけだし、このくらいのステータスはあるか。……とりあえず、あの時と同じやり方でいいかな。


僕はそう考え、そのまま地面を強く蹴る。


僕の身体はそのままの勢いで黒竜に肉薄し、風流を振るう。しかし風流の刃は黒竜の身体を覆う鱗に、硬い音を立てて阻まれる。


── やっぱり、この鱗が厄介だな……。前は隙間を縫って斬っていったけど……。……だめだ。それだと時間がかかりすぎる。となると……。


僕は黒竜の首元にある、1枚だけ向きが逆向きの鱗を見る。


── あそこを攻撃して倒すしかない、か……。ただ、それをやるなら一撃で沈める必要があるから……。


そんなことを考えつつ、僕は流れるように刀を使い、鱗の隙間から攻撃を通していく。


── 駄目だ。やっぱり時間がかかるし、碌なダメージにならない。……あ、そうだ。


僕はとあるものを思い出し、試してみることにする。


「桜花流刀術、三式・啓翁!」


僕は鱗の隙間を縫って風流を黒竜の右の翼の付け根に突き刺し、雷を流す。そして、


発動ファイア!」


と唱える。


── その瞬間、黒竜の右の翼が吹き飛ぶ。黒竜はそのダメージ故かどこか苦しそうな鳴き声をあげ、こちらを完全に敵と認識したような目で見てくる。その様子を見つつ、僕はぶっつけ本番の策がうまくいったことに安堵する。


僕がやったのは、雷魔法の性質を利用した攻撃だ。雷魔法はその電気の性質に目が行きがちだが、副次効果として大きな熱が発生する。それを利用して、僕は黒竜の翼の付け根付近の水分を内部から蒸発させ、翼を吹き飛ばしたのだ。


── とりあえず、これでかなりダメージは入ったでしょ。……多分、これなら一撃で沈められる。たけど、機動力は削いでおくに限るか。


そのままの勢いで黒竜の背後をとった僕は、


「桜花流刀術、五式・八重桜!」


と、もう片方の翼の付け根に八連撃を叩き込み、そのまま斬り飛ばす。


── 流石に、これならいける。


そう判断した僕は、こちらを向いた黒竜と真正面から向かい合い、刀を納め、構える。


── 桜花流刀術、二式改・雷桜閃らいおうせん


刹那、僕は黒竜の後ろに移動する。そんな僕の右手には、抜き放たれた風流。


そして、一瞬の間をおいて、黒竜の首が地に落ちる。


桜花流刀術の二式は、速度に特化した居合を放つ桜閃おうせんという技になっている。そこに、雷魔法を利用して鞘の中で刀を加速させ、より早く抜き放てるようにしたのがこの雷桜閃だ。


── ふぅ……。とりあえず、町に被害は出なくてよかった……。……てか、一撃で首を飛ばせるんだったらあそこまでやる必要なかったな……。……まあ、とりあえず素材を回収するか。


僕はそのまま動かなくなった黒竜の元へ向かい、その巨体を虚空に収納する。


── それじゃあ、他の皆さんの方に……っと、ちょうど終わったみたい。


見れば、身体中に傷を負った鬼ノ王がゆっくりと倒れていくところだった。Sランクの皆さんは満身創痍な見た目でこそあるものの、誰1人として再起不能になるような傷を負ったりはしていないみたいだ。


「お疲れ様です。」


僕はアーサーさんに近づき、そう言う。


「ああ……うん……。……ノア君も、お疲れ様……。」


するとアーサーさんはどこか遠い目をしつつそう言う。


「一応聞いておきたいんですけど、誰かやばい怪我をしてたりは?」

「それは大丈夫だよ。彼女のおかげで、体力以外は特に問題はないよ。」

「よかったです。」

「それより、君が無傷どころか息1つ切らしてない方が気になるんだけど……。」

「まあ、慣れです。」

「……そうか……。……とりあえず、報告に戻ろうか。」

「分かりました。」


そして僕たちは、そのままギルドに向かっていくのだった。

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