異種族恋愛冒険ファンタジー 森の守護者と弓の冒険者

やきそばぷりん

プロローグ

フィン・クロウリーは、村の監視塔の窓から広がる風景をぼんやりと見つめていた。眼下に広がる静かな村の風景、遠くに見える森の木々、時折通り過ぎる馬車の音。しかし、その静けさの中で、彼の心はどこか落ち着かなかった。


「また、今日もだ。」フィンは呟き、手に持った弓を弄りながら視線を村の入り口に向けた。数日おきに、異種族の女性たちが村に護衛の仕事で訪れることがあった。最初に見かけたのは、黒髪のエルフ。高身長で、妖精のように優雅な動きで村を歩くその姿は、フィンの目を釘付けにした。


次に訪れたのは、肌が青白いサキュバス。妖艶な美しさと、どこか放つ神秘的な魅力が、フィンの心を捉えて離さなかった。彼女が村の広場を歩いているとき、フィンは監視塔からじっとその後ろ姿を追い続けた。


そして、つい最近村に現れたのは、白い羽を持つ天使のような女性。顔立ちは整い、柔らかい笑顔を浮かべながら村の道を歩いていた。天使の羽が舞い上がるたびに、フィンの心も軽くなるような錯覚を覚えた。


「もっと、近くで見てみたいな…」


フィンはついに、思わず口に出して呟いてしまった。異種族の女性たちと会うことが、日々の退屈な監視の仕事に対する唯一の楽しみとなっていた。どれも美しい女性たちであり、その存在が彼を強く惹きつけてやまない。


だが、彼はそれ以上のことはしなかった。仕事上の立場もあるし、彼は村の守り役。監視塔の任務は大事だとわかっている。しかし、毎回その女性たちが去るたびに、何とも言えない空虚感が胸に広がるのだ。


「このままでいいのか…?」


ある晩、またそのサキュバスが村に立ち寄り、街道を歩く姿を見たとき、フィンは心の中で強く思った。こんな平凡で退屈な日々に、いつまでも縛られていていいのか?美しい彼女たちに触れることなく、ただ遠くから見つめているだけでは、満たされない。このままでは、何も変わらない。


そのとき、ふと閃いた。


「王都に行こう。」


王都には、きっともっと多くの異種族の女性たちがいるだろう。そこでなら、新しい世界が待っているはずだ。そこでなら、彼の探している「何か」が見つかるかもしれない。どこに行っても美しい異種族の女性たちと出会い、もっと近くで触れ合えるはずだ。きっと、王都にはそれができるチャンスがある。


フィンはその瞬間、決心を固めた。監視塔での仕事を終え、準備を整えたら、王都へと向かおう。冒険者としての新しい人生が始まるのだ。


「俺の冒険は、ここからだ。」


その思いを胸に、フィンは静かに酒場のテーブルから立ち上がった。心の中で湧き上がる期待感と、少しの不安。それでも、もう一度見送るべきは、美しい異種族の女性たちではなく、冒険の世界だということを確信した。


彼の目は、村の監視塔の窓に一瞬だけ戻った。静かに立っていたその場所が、もう一度足を踏み入れることのない未来に変わりつつあることを感じながら。まるで、毎日見ていた景色が、ひとつの区切りを迎えようとしているかのように。


村の景色は、やがて新しい道を歩み始める自分の足元に消えていく。それをしっかりと見届けるように、フィンは一歩踏み出した。


「今まで、ありがとう。」


その言葉を胸に、フィンは静かに故郷を後にした。故郷を背にして歩き出す足音は、もう迷うことなく王都へと続いていく。どんな世界が待っているのか、それを知るために。美しい異種族の女性たちと出会い、もっと近くで触れ合うために。

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