史実とは異なる歴史を歩む大日本帝国
@strike_raptor
第1章 転生と工業力の強化
第1話
※本作は「史実とは違う大日本帝国」の構成をベースにした小説です。
―――――――――――――――――――――
ここは…どこだ? 病院か? 私は――
…にしても、この病院、どこか設備が古いように見える。まあ、看護師さんが来たらここがどこの病院か聞いてみるか。
「すみません、ここはどこでしょう?」
「……!!!」
「先生! 先生! 岩井さんが目を覚ましました!」
岩井? 誰のことだ? 私は及川のはずだが……。まあいい。それにしても「目を覚ました」って、そんなに長く意識を失っていたのか?
その後、担当医の問診と検査が行われ、しばらく安静が必要とのことだったが、命に別状はないとの診断を受けた。
(診察後、自分が及川雄志であることを伝えたが、医師は「あなたは
(ともかく、今後どう生きるかを決めねばなるまい。時代は日本が戦争へと突き進んでいく最中だ。このまま流されるのは危険だし、せっかく過去に来たのだ。未来の知識を活かし、少しでも歴史を変える努力をしてみたい)
私はまず、陸海軍の協力体制を構築することを目標に据えた。その後はひたすら工業力を底上げし、来るべき戦争に備える。それが、私の選んだ道だった。
こうして私は、大正14年度卒業生として海軍兵学校を無事に卒業し、横須賀海軍航空隊に配属された。ここで航空機の操縦と運用に関する訓練を受け、1928年までの教育課程を修了するまで、技術を磨き続けた。
1926年4月には、将来の航空機の発展について私なりの見解をまとめた論文を、海軍艦政本部第六部宛に提出した。
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1926年9月 海軍艦政本部第六部
本日は、その論文に関心を示した本部の方々による質疑応答の場だ。正直、緊張している。
「岩井君、わざわざ来てもらってすまない。今日は君の論文について話をしたい」
「ありがとうございます。よろしくお願いいたします」
「早速だが、君の論文には『将来的に航空機が発展すれば、戦艦は不要になる可能性がある』とある。これは本気でそう思っているのかね?」
「はい。航空機は、すでに欧州の戦場において一定の成果を上げています。特に空母という新たな艦種の登場により、航空機の運用範囲は劇的に拡張されました。海上でも作戦行動が可能となったことは、戦術の大きな進化です」
「しかし、航空機が戦艦を脅かす存在になるとは思えん。対空砲で簡単に撃ち落とされるのでは?」
「それが、意外と困難なのです。現在の航空機は全長5〜8メートル、全幅10メートル程度で、距離があれば視認も難しい上、空中を自在に動くため命中させるのは非常に困難です。実際、近年の欧州の戦例でも、対空砲での撃墜は少数に留まっています」
「では、敵が大量の航空機を投入してきた場合、君ならどう対処する?」
「私なら、まず自軍航空機による迎撃を行います。その上で、対空砲火により威嚇を加える。命中を目的とするよりも、敵操縦士に心理的圧力を与え、命中精度を下げることが重要です」
「ふむ……今日は非常に興味深い話を聞かせてもらった。今後、また意見を聞くこともあるだろう。その時はよろしく頼む」
「はい! ありがとうございました。失礼いたします」
(ふぅ……緊張した。だが、提案のインパクトは大きかったはずだ。航空機が戦艦を沈める未来――現時点では荒唐無稽に思えるかもしれないが、やがて現実となる。私の戦いは、これからが本番だ)
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1928年 横須賀海軍航空隊司令部
教育課程を終え、平時の哨戒任務に就いていたある日、司令部から呼び出しがかかった。論文以来のことである。
(コンコンコン)
「失礼します。岩井翔、海軍少尉。ただいま到着いたしました」
「入りたまえ」
「失礼いたします」
…
「異動…ですか?」
「ああ。君は来年、1929年付で海軍航空本部に異動となる」
「航空本部……あの論文が関係しているのでしょうか?」
「そのようだ。実は、航空本部が一昨年に設立された段階で、すでに君の異動が検討されていた。ただし、初年度は準備で手一杯だったため、実質的な配属はもう少し後が適切と判断されたらしい」
「なるほど……承知しました。岩井翔、異動命令、謹んで拝命いたします」
「うむ。それと、もう一つ。君は異動と同時に中尉に昇進することが決まっている」
「えっ?」
「ははは、驚いたか。君の働きぶりと将来性が高く評価された結果だ。これからも頼むぞ」
「ありがとうございます!」
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こうして私は昭和4年付で海軍航空本部の技術部へと異動し、中尉に昇進することとなった。
航空本部では、搭乗員としての経験を活かし、テストパイロットや航空運用の実地意見を提供する役割を担うことになった。搭乗員視点からの航空機設計や、将来的な空母の在り方についても意見を求められる立場にある。
私の航空本部での初仕事は、1930年に中島飛行機から提出された「NY戦」の性能評価だった。私は航空本部から派遣された審査員として関わり、実際に機体に搭乗してのテスト飛行を行った。
その後、1932年4月に本機は史実通り九〇式艦上戦闘機として制式採用されるに至った。
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