ゲルググ量産にみるMS整備と兵站 後編

 ■新ジム採用による整備面への影響


 ゲルググを開発中止にして新ジムに切り替えた場合。整備面において様々な不都合が生じると推測される。


 ※ここからは資料と出来るものが存在しないので推測が多く含まれる事を断っておきたい。


 ▼新ジムの設計


 リユースエンジニアリング、とシャアの口から出た。実機であるガンダムを解体するなり、スキャンするなりで、部品等と図面の見当をつけるという話だろう。


 戦闘力に関しては劇中で描かれた通り。エースパイロットの搭乗、駆動系の稼働効率を上げる処置(マグネットコーティング)でカタログスペック以上のものを出してしまった。


 それらを差っ引けば、ガンダムとほぼ同等のゲルググ、それと同等ではないだろうか。


 だが、このまま新ジムを生産した場合。ジオン系MSとの部品の互換性はほぼ期待出来ない。


【補足】


 例外として、以下が実行されていれば期待出来る。


 統合整備計画


『機動戦士ガンダム0080ポケットの中の戦争』で説明された設定。


 ・ジオンMSは製造メーカー毎に、部品、操縦方法、が異なる。


 ・整備とパイロットの負担軽減の為、これを統一する。


 劇中で計画の実行有無についての説明はない。だが、提唱者であるマ・クべ大佐は登場している。少なくとも提唱だけは成された、と想像する。


 後は実行されたかどうか。筆者は第4話でヒントとなるシーンに着目してみた。


 エースパイロットのシイコ


 元連邦軍、元エース。彼女が新ジムへ搭乗する前にシミュレーターで訓練を受けているシーンがある。


 元エースとは言え、引退してブランクのあるシイコ。それが、随分と簡単にかつての勘を取り戻していた様子。


 彼女はかつて連邦製MSにしか搭乗した事がないはずだ。よって、新ジムはかなり連邦技術体系寄りの機体となっていた可能性が高い。


 仮に新ジムが統合整備計画の影響を受けていれば、ジオン系の操縦系統となっていたはず。シイコは機種転換訓練を受けなければすぐに乗りこなせるものでもないだろう。


【推測】


 新ジムにザクⅡとの部品互換性はない。ゲルググと比較した場合、整備性は随分と低下する。


 ▼新ジムの工廠


 どこで生産するか?これはゲルググを開発中止にしたのだから、代わりにそこで、と考えるのが自然ではないだろうか。


 それは月面都市グラナダの、ジオニック社の工廠。ザクⅡと同じ生産ラインは使えないので、それを削減し新ジム用のラインを新設。


【推測】ザクⅡの部品製造数が削減されたと思える。開戦初期の主力MSとは言え戦争後期も前線で使われ続けた機体、補修作業に何らかの影響を及ぼしたのではないだろうか。


 ▼新ジムの整備


 前述の、ゲルググの整備に関する記述で挙げたメリットは全てない。新たな部品が増え、メカニックの負担は増大したと想像される。


 ■メリット


 ここまで、整備面から見たデメリットばかり列挙してしまった。だが、他の視点から見ればゲルググより優れていた点もある。


 ▼ビームライフル


 MSV(プラモ、雑誌などで展開された設定)に拠れば、ゲルググはビームライフルの開発に手間取り、実戦投入が遅れたとされている。


 つまり、これが解消されれば早期投入が可能。


 連邦製のビームライフルごとガンダムを奪取したので、ライフル開発の障害は取り除かれたはず。


 ゲルググより早い段階での実戦投入が可能だったと想像出来る。


【結論】新ジムとゲルググの戦闘力はほぼ同じ、整備面で新ジムが劣る。


 ならば、機体開発計画はそのままにゲルググを続行。連邦製からヒントを得たビームライフルを装備させればよかっただけ。


 戦時という急を要する状況で新ジムを量産する必要はなかった。


【補足】


 前述はあくまでも量産の必要なし。テスト機として何機か製造する意味は充分過ぎるほどにあった。


 それらで得たデータを、ガンダム・クァックスへフィードバックする為に。

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