第5話 そろそろ5話目だし、進展が欲しい。
『なかなかやるのう……』
ゼハーと、肩で息をしながら白狼が『オマエ、良いパンチしてんじゃん』的な笑みを浮かべてくる。
いや、デカイ狼だから、表情は完全には読めないけど、多分そんな感じだ。
「そりゃ、どーも……」
先ほどの精神的ダメージを引きずっている俺はそんな簡単な返事を返す事しか出来なかった。
『さて、主の要望じゃった他の人族の集落の場所じゃが…』
やっとだ……そう思いつつ俺は白狼の言葉を待った。
『どっちじゃったかのう……?』
「知らねーのかよっ!」
『い、いや、知っておるぞ!うん!知ってる!た…、多分アッチじゃ!』
ズビシっ!と効果音が聞こえて来そうな程の速度で白狼は右前脚を前方に指した。
…のだが……
「おい……何故、顔を背ける……」
そぅ、コイツは右前脚を前方に、顔を後方に背けて顔を見えない様にしているのだ。
『い、いや、だって、儂……この森から出た事無いし、人族の集落の場所なんて知らんもん……』
バツが悪そうに言葉を吐き出す白狼。
言い方は可愛らしいけども、なにぶんデカイ狼だ。
あまり萌えなかった。
「そうか、知らないのに聞いたりして悪かったな。」
知らない事を責めるのも気が引ける。
俺は素直に答えを諦めて自分でこの森を抜けて村か街を目指す事にした。
『え……?怒らぬのか……?』
以外そうな顔で白狼が聞いてくる。
「いや、だって、知らないんだろ?
いいよ。適当にこの森を抜けて何処かの村か街を目指すよ。」
『そ、そうか。でも、此処から儂が居なくなれば主は10秒以内にこの森の獣たちに喰い殺されるぞ?』
え……?何それ?怖い。
『今は儂が居るからミンナ大人しいが、本来なら異分子は直ぐに攻撃対象じゃ。』
「え…、じゃあ、森の出口まで案内して貰うのは……?」
血の気の引いた感覚を感じながら目の前の白狼を頼って見る。
ある程度は打ち解けた筈だ、多少の無理は聞いてくれるかもと、淡い期待を胸に提案して見る。
『ふむ。案内するくらいなら吝かではないが、主の足だと森を抜けるのに3日程かかるが大丈夫かの?』
3日?!
目の前で希望の光が閉ざされた気がした。
てっきり3時間程度歩けば抜けられると思っていた。
3日って、どれだけ広い森なんだ?
それに、夜を越す為の準備も食料も何も持っていない。
夜になると気温も下がるだろう事は簡単に予想できる。
暖を取る為に火を起こそうにも何の準備もない。
……詰んだな……
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