転生したら魔王城の参謀に任命されたけど、魔王がポンコツ過ぎてすでに勇者に負けそうな件

@badbadbadbadad

プロローグ「異世界転生、そして魔王城就職」


「睡眠時間は毎日三時間。残業時間は月に二百時間超。新卒で入った戦略コンサルの仕事は地獄だったが、それでもやりがいを感じていた。社畜とはいえ、俺――東條涼(とうじょう りょう)は自分の仕事に誇りを持っていたし、この激務を続ければいつか一流のコンサルタントになれると信じていたのだ」


……そんなことを考えながら、俺はトラックに轢かれた。


あっさりと。


明け方まで働いた報告書のプレゼン資料を片手に信号待ちをしていたはずなのに、次の瞬間には背後から響いたタイヤの悲鳴と、衝撃、そして完全な闇。


呆気ない人生の幕切れだった。


だが、物語はここからが本番だ。


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「――で、君が次期魔王様の新しい参謀として呼び出された『異世界転生者』ってわけだね?」


気が付くと、俺は豪華絢爛な城の広間に立っていた。目の前には角を生やした妙に丁寧な老人が、俺の目を覗き込みながら言った。


「ああ、異世界転生というやつか。テンプレだな」


俺は冷静に辺りを見回す。どうやら本当に異世界に来たらしい。だが一つだけ不可解なことがある。


「なあ、異世界に召喚されるのはいいんだが……なんで魔王側なんだ?」


老人は白いヒゲを撫でながら申し訳なさそうに苦笑した。


「いや、それが……最近、我が軍はちょっとピンチでしてね」


「ピンチ?」


「正直に言いますと……勇者にもう、負けかけてるんですよ」


「は?」


「あー、正確に言えば、前魔王様が退任されて、新しい魔王様が後を継がれたんですが……その……」


「新しい魔王?」


俺の問いに答える前に、広間の扉が勢いよく開いた。


「あっ、ごめんなさーい、遅れました!」


甲高い声とともに入ってきた女性の姿を見て、俺は思わず目を丸くした。真っ赤なドレスを纏い、腰まで届く銀色の髪、頭には立派な魔王の証である角――だが、その印象を一気に打ち消すほどの、豊満すぎる胸元に視線が釘付けになった。


「ま、魔王様! せめて召喚された参謀殿には威厳あるお姿で……」


「だって、朝ごはん食べたら眠くなっちゃったんだもん~」


老人の言葉を遮り、目の前の女性――いや、魔王は甘えた声で言った。


俺は頭を抱えた。これは明らかに『ポンコツ』だ。親の七光りどころか、もはや星の光すら届いていないレベルの。


俺は心の中で深いため息をつきながら、現実を受け入れることにした。


――確かに俺は激務に耐えられるタイプだし、課題を整理して戦略を立てるのはプロだ。だが、これは予想以上に骨が折れそうな職場環境だ。


それでも、俺は仕事に情熱を持って取り組む男だ。


異世界だろうがポンコツ魔王だろうが、やってやろうじゃないか。


「とりあえず……現状の課題を洗い出すところから始めるぞ。まずは詳細な現状把握だ」


俺はすぐに頭を切り替え、プロのコンサルとしての顔に戻った。俺が転生したこの異世界での最初の仕事は、魔王軍を復興させ、勇者軍に対抗できる組織へと生まれ変わらせることだ。


俺のストイックな魂が再び燃え上がり始めたのを感じながら、こうして俺――東條涼の異世界魔王城コンサル生活が幕を開けた。

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