都市伝説、買います。〜語ると現実になる噂

ダメフリ

プロローグ―都市伝説、買います。

あの通りの先――路地裏にひっそりある、小さな古本屋。


看板も出てなくて、電気もぼんやりしか点いてない。


でも、扉には貼り紙があるんだ。


《都市伝説、買います。》


ただ、それだけ。


誰がやってるのかも、何のために“買う”のかも、わたしは知らない。

でも、噂によると――


「語った都市伝説が、現実になる」


……らしい。


たとえば、「深夜のエレベーターに、絶対に押してはいけない階がある」とか。


「廃校のトイレの三番目に、声をかけてはいけない理由」とか。


そういう、よくある話。

だけどそれを売った人は、みんな……しばらくして、いなくなる。


「引っ越したんだよ」って言う人もいれば、

「旅行に行ったまま帰ってこない」とか。

なかには、「最初からそんな人いなかった」とか言い出すやつもいて――


……まあ、ありがちなオカルトネタだよね。

笑ってスルーすれば、それで済む。


でもさ。


もし本当に、その都市伝説が“目を覚ます”としたら?


もしそれが、自分の話だったら?


わたしの名前は、ミナ。


高校二年生。


趣味は……うーん、怖い話を集めること。


べつに霊感があるわけじゃないけど、夜の街の静けさとか、ひとりで歩く背筋のぞわっとする感じが、ちょっとだけ好き。


今日も、またひとつ、噂を見つけた。


だからそのお店に、行ってみるつもり。


売れるかはわかんないけど、

もしその話が本物だったら――


なにかが、始まる気がして。


なにか、取り返しのつかないことが。


……でも、わたしはたぶん、

それをどこかで待ってた。

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