第11話 回想④
橘は相変わらず病院内を散策していた。この世界が仮想空間だということは理解できた。しかし、最初に入院した際に、自分の身に何が起きたのかはわからなかった。
「あの時はいったい何が起きたんだ…」想像しようにもできなかったのであった。高次元の存在、つまり、神のようなものに殺されかけたとでもいうのであろうか。なぜかその時のことを想像すると、テンションが上がるのが不思議であった。まるで、何かをやり遂げたような感覚…。そして、まるで、ゲームの世界でいう、無敵になったような感じ。あの時の感覚を常に考えていた。ただ、なぜか、橘はこの世界が仮想空間であることを周囲に伝えなければならないと思っていた。最初に入院した際に、ある女性が、橘を導いたように、自分もそうしなければならないと感じ取っていたのであった。人間の創作した作品は、ある意味、創作者が神のような存在になる。つまり、生かすも殺すも人間次第ということだと橘は思った。例えば、絵のキャラクターに包丁を持たせて、人を刺す描写を描けばキャラクターを人殺しにすることもできる。また、人形であれば、頭を切り落とせば、殺すこともできる。すべて人間の匙加減だ。このような思考をしていると段々と恐ろしいことが思い浮かべられてくる。もし仮に、この世界がゲームのような仮想空間であった場合。操作しているのは自分よりも高次元の存在。つまり、高次元の存在の匙加減により、人間を生かすも殺すも可能である。アメリカなどで、銃の乱射事件を思い浮かべた。これは、ゲームで例えるのであれば、高次元の存在であるプレイヤーが、低次元の人間を操っているということではないのではなかろうか。人間も、よく、ゲームの世界ではキャラクターを何のためらいもなく殺害している。そのような感覚なのかもしれない。
ある日、大沢と話していた。
「僕はこのことを理解してできることをしたいと思います」橘のできることというのは世の中に真実を伝えることだと思っていた。
大沢は「そうですね」と答えた。
人間の創作したものは、すべて人間が神のような存在であるとこの時は思っていたのである。橘の行動は、次第におかしくなっていくのであった。
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