好きだよ、ずっと
初夏の匂いが立ち込める公園。私は自販機で買ったお茶をちびちび飲みながら、ベンチに座っていた。
ジリジリと虫が鳴き始めてきた公園で、私は1人ため息を吐く。
「早すぎるよね…!」
自分でそうツッコミ、握っていたペットボトルに力を入れてしまう。少しだけお茶がこぼれて私の手を濡らす。
今の時刻は午前7時。昨日送ったメッセージには7時半に公園に来てと送ってしまった。
「誰にも見られたく無かったからこんな早くにしちゃったけど、どう考えてもおかしいよね…」
告白する場面を見られたく無かったとはいえ、いくらなんでも集合時間が早すぎる。
しかも今日は休日。休日にこんな早く起きるなんて私もしないくらいだ。
「昨日の私焦りすぎだよ…」
そももそも、場所だって公園じゃなくても別に大丈夫だ。私の家でもいいし、なんなら夏帆ちゃんの家でも構わない。何で公園にしちゃったんだろ。
「はぁ…」
「ほら、灯。ハンカチよ、手が濡れてるわ。」
「ありがとう…ってえぇ!?」
さらっと出されたハンカチを受け取ってからびっくりする。横を向くと、そこには1番会いたかった夏帆ちゃんの姿があった。
「ど、どうして夏帆ちゃんがここに!?」
「どうしてって…灯が私を呼んだんでしょう?」
「いやそうなんだけど…」
集合時間は7時半。今はまだ7時過ぎだ。
いくら何でも早すぎる。
「灯の誘いなら30分前に来るのは当たり前じゃない。」
「そ、そうだっけ?」
何を当然の事を、といわんばかりの夏帆ちゃん。相変わらずの事に、少しだけ落ち着きを取り戻してきた。
「…話があるんでしょう?」
「うん。」
そう言う夏帆ちゃんに、顔だけじゃなく、体も夏帆ちゃんの方に向ける。
「スー、ハー…」
深呼吸をして、バクバクとうるさい心臓を少しでも落ち着かせる。閉じていた目をゆっくり開けて、私の顔を見る夏帆ちゃんの目と合わせる。
「私、夏帆ちゃんの事が好き。
多分、出会った時から、ずっと。
…私と付き合ってくれませんか?」
「いいわよ」
「…え?」
「だから、いいわ。私も灯に一目惚れしてたから。お互い様ね。」
柔らかい笑みを浮かべて、夏帆ちゃんは私の体を抱きしめてくる。
嬉しさと温かさ。そう言った感情が胸から溢れてきて、気づけば涙が流れてきた。
「嬉しい…!」
「私もよ。ずっと告白しようって思ってたけど、中々勇気が出なくてごめんなさい。」
「全然大丈夫だよぉ…。」
だって、今こんなに幸せなんだもん。
「ほら、ハンカチ」
「ありがとう…。」
夏帆ちゃんのハンカチで涙を拭いて、ようやく夏帆ちゃんの胸から顔を離す。
しばらくお互い見つめ合っていると、夏帆ちゃんの手が伸びて私の頬を触る。
「あ…」
「…灯。」
そのまま真剣な表情を浮かべて、夏帆ちゃんの顔が近付いてくる。
どんどん夏帆ちゃんの顔が近付いてきて、どんどん心臓の音がうるさくなる。顔も真っ赤なはず。
そうして夏帆ちゃんの唇と私の口が重なるその瞬間ーーー。
カシャ
「え?」
「ーーー!?」
突然、カメラのシャッター音が聞こえてくる。
夢の世界から一気に現実に戻されたような感覚。夏帆ちゃんもとても驚いている。
「あ〜ごめんごめん。邪魔するつもりは無かったんだけど…つい。」
てへっ。そう言って舌を出して笑いながら謝罪するのは莉愛ちゃん。一体どうしてここに?
「なんで莉愛ちゃんがここに?」
「ここら辺散歩してたら、偶々2人が見えたから何してんのかな〜って見てたんだ〜。
そしたら2人が急に抱き合って顔がドンドン近付いてくじゃん?これは是非撮っておかないと!と思ってさ〜。」
「いや撮らないでよ…」
おかげでさっきまでのムード台無しだよ。
まぁ公園でムードもへったくへれも無いかもしれないけどさ。
そんな私達の会話をよそに、夏帆ちゃんはさっきから俯いたままだ。
「夏帆ちゃん?」
「夏帆っち?」
「よくも…よくも灯のファーストキスの邪魔をしてくれたわね…潰す。」
「へ?」
ゴゴゴ…とドス黒いオーラを出しながら、ゆっくりと莉愛ちゃんの方へ近付いていく夏帆ちゃん。まるで最初に会った時の夏帆ちゃんみたいだ。
「ちょ、夏帆っち?結構マジギレしてる?」
「黙りなさい。今すぐに消してあげるわ。」
その言葉に、後ずさる莉愛ちゃん。いつもの飄々とした態度はどこへやら、冷や汗を流しながら後ろに下がっている。
「…ごめんなさいっ!」
「逃げるなクソ野郎!!」
公園を飛び出す莉愛ちゃんと、それを全力で追いかける夏帆ちゃん。
「2人とも、元気だね…」
まだ朝の七時過ぎなんだけどな…。そんな事を思いながら、空を見る。
雲一つない快晴の空は、私達を祝福するかのように青く澄み渡っていた。
私の親友は少し過保護です スザク大温泉 @kakuyo480
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