私の親友は少し過保護です
スザク大温泉
私の親友は少し過保護です
ピピッ…ピピッ…
「う〜ん…」
午前6時に設定しておいたスマホのアラームが、部屋に鳴り響く。意識はいまだに朦朧としているが、アラームを止めようと布団から腕を出す。
「さむっ…」
未だ肌寒い季節。急な体温変化にびっくりして腕を布団の中へ戻そうとするが、アラームを止めるのが先だと判断した私は頑張って腕を伸ばし、スマホを探して行く。
しかし、どれだけ腕を振り回してもスマホにぶつかる気配が無い。アラームが鳴り響き続けてそろそろいらいらしてきた。
(昨日どこ置いたんだっけ)
確か、お風呂に入って髪を乾かしている間に少しいじってて、その後布団に入って寝たはず。
と言う事はおそらく部屋の中にあるテーブルらへんにあるはずだ。
ベッドからテーブルまでは少し距離がある。
頑張って腕を伸ばしても届く距離では無い。
「仕方ない。起きよう…」
意を決して布団から出ようと体に力を込めた瞬間、部屋のドアがガチャリと開き、私のスマホのアラームが止まる。
そしてそのまま、部屋に入って来た人は私の布団の上に覆い被さるように体重をかけてくる。
「重たい〜…」
顔を顰めて犯人を見ようと目を開く。
「おはよ、灯。ご飯出来てるよ。」
「夏帆ちゃん。おはよぉ」
そこには、私の親友である清瀬夏帆ちゃんがいた。少しキツめの顔を綻ばせて、とても幸せそうな笑顔を浮かべている。
私が起きあがろうと上体を起こすと、なぜか夏帆ちゃんがぎゅっと抱きしめてくる。
「夏帆ちゃん、起きれないよ…」
「ごめん。もう少しだけ灯の顔見させて。
後1時間…いや30分だけでいいから。」
長いなぁ。もうとっくに朝ごはん冷めちゃうよ。
「…て言うか夏帆ちゃん。制服でしょ?
こんな事してたらシワついちゃうよ?」
「大丈夫よ。灯の寝ぼけた顔を見れるくらいなら、制服にシワがつこうが泥がつこうが関係ないわ。」
「流石に泥がつくのは良く無いと思うなぁ…」
て言うか制服に泥なんか付かないと思うけど。
そうして、しばらく起きる、起きないのやり取りをしてようやく私は体を布団の外へ出す事に成功した。
「それじゃあ、一階に行きましょうか。」
「うん」
夏帆ちゃんと手を繋ぎ、私たちは一階へと降りる。既に父さんと母さんは仕事へ向かったのか、リビングには誰1人いなかった。
「それじゃあ灯。召し上がれ」
「うわぁ…!美味しそうっ」
テーブルに座ると、夏帆ちゃんが作ってくれた朝食を頂く。ベーコンエッグに豆腐の味噌汁。
朝から炊いたのだろう、ホカホカの白米。
どれもこれも、私の大好きなメニューばかりでご飯を見てるだけで自然とお腹が空いてくる。
「それじゃあいただきます!
ってあれ?夏帆ちゃんのご飯は?」
勢いよく手を合わせて食べようとするけど、
ふとそんな疑問が生まれる。私だけが食べても良いのかな?
「問題ないわ。私は灯が起きる前に自分で作って食べたから。
それに、私は灯がご飯を食べてる姿を見るだけでもお腹いっぱいになるから。」
え、それって私がご飯食べてる姿見られるって事?
「…恥ずかしいからテレビとか見ててくれない?」
そう言ってリモコンを渡すと、夏帆ちゃんの幸せそうな顔がみるみる内に青ざめていく。
「そんな…っ!灯の食べてる姿を見るのが私の大好きな時間の1つなのに!見ちゃいけないの?」
「うっ…」
すごく悲しそうな表情でこちらを見つめてくる夏帆ちゃん。何だかそんな表情をされると私の罪悪感がものすごい膨れ上がるなぁ。
でも、せっかく朝食を作ってくれたんだし、何か1つくらいご褒美があってもいいよね。
そう心の中で正当化した私は、仕方なく朝食を観察する事を許可した。
「…写真とか撮らないなら、いいよ?」
「勿論よ!私の網膜に一挙手一投足全て焼き付けるわ!」
「それもやめて欲しいかなぁ…」
興奮した面持ちでこちらをじーっと見つめてくる夏帆ちゃんに苦笑しながら、私は親友が作ってくれた大好きな朝食を食べるのだった。
☆
「それじゃあ灯、行きましょうか。」
「うん」
朝食を食べて、身支度を整えて。私達2人は高校に行く為に家を出る。
ガチャリと家の鍵を閉めて、いつものように夏帆ちゃんと手を繋ぎながら通学路を歩いて行く。
「今日はいい天気だね、夏帆ちゃん。」
空は青く澄み切っていて、そろそろ夏の始まりを感じ始める頃だ。雲一つない晴天は久しぶりなので、朝からテンションが上がってる。
「そうね。でも、気をつけて。ここの通学路は車の通りが多いからしっかり白線の内側を歩く事?いいわね?」
「うん、分かってるよ。」
私の手をしっかりと握り、常に私が車道に出ないように白線の内側を歩かせてくれる。
ちょっぴり過保護だと思うけど、私のためを思ってくれての行動なので、実は嬉しいのは内緒だ。
「ーーー灯!止まって!」
そんな事を思っていると、突如、夏帆ちゃんがとても大きな声を出して私を止まらせる。
かなり焦っているのか、繋いだ手にも結構な力が加えられている。
「夏帆ちゃん、どうしたの…?」
「…あの電柱の下を見て。犬の糞よ。
危険だわ。もしあれに気づかずに通り抜けていたら、灯の体に糞の臭いがついてしまったかも知れないわ…」
そう言って夏帆ちゃんはキョロキョロと左右を見渡し、大股で反対の道路に渡って行く。
「とても危なかったわ…。」
「えっと…そんなに危険だった?」
別に犬の糞の近くを通ったって臭いは付かないと思うんだけどなぁ…。
「当然よ。もし灯の完璧な体臭の中に、少しでもあんな犬っころの糞の臭いが混ざったら私は人生最大の絶望を味わうと確信しているわ。」
「そっかぁ…」
やっぱり夏帆ちゃんは過保護だなぁ…。
そう思いながら、夏帆ちゃんと繋いだ手に少し力を入れる。
「ーーっ、灯?どうしたの?」
「うんん。何でもない。
いつもありがとね、夏帆ちゃん。」
近づいてお礼を言うと、夏帆ちゃんの顔がみるみるうちに真っ赤に染まる。それが何だか面白くて、私は夏帆ちゃんの腕を引っ張りながら学校を駆け足で目指して行った。
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