第3話 なんかごめん

なんかごめん、って何?

最初に目にしたとき、血が逆流するような感覚になった。


「なんか」って何?曖昧にして逃げてるだけじゃん。

ちゃんと謝る気、ある?


私は即座にSNSに書いた。

「なんかごめんって表現、マジで無理。びっくりドン引き散らかした。散々辞めろっていわれているのにね。」って。


その後も何人かが「いいね」してくれて、私はちょっと安心した。

ほら、私の感覚、間違ってなかったんだって。


でも、しばらくしてから、違和感がじわじわとやってきた。

検索したら「なんかごめん」って、意外とみんな普通に使ってる。SNSでフォローしてリア友も、ふと見た人気インフルエンサーも、日常の失敗談に添えて「なんかごめんね笑」って。

そのリプ欄は、あったかくて、緩やかだった。


あれ?と思った。

この言葉に、誰も怒っていない。

私だけが、剣を抜いていた。


スクロールするほどに、「なんかごめん」はむしろ、優しさの一種だとすら思えてきた。

強く断定しない、感情の余白。

ちょっと気まずい時の、ささやかなクッション。


私の中に、何かがすうっとしぼんだ。

恥ずかしい。

剣なんて、最初から抜くほどのことじゃなかった。

恥ずかしさのあまり、自分のアカウントに鍵をかけて、閉じこもった。


……まあ、うん。

今の気持ち、ひと言で言うなら。


——なんか、ごめん。

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