2-7
目を覚ました門番は、最初のんきにあくびをした。そしてあたりが暗いのに気が付いて、目を丸くして首をぐるりと回した。
魔術で眠らされた、などとは思わない。居眠りという失態を自覚したのである。
慌てて立ち上がった門番は、牢の中を見た。スドアはぐっすりと眠っていた。他には誰もいない。
まさかその中に、体を迷彩化させたロボットが紛れ込んでいるなど、想像できるはずもない。
もともとペカリクは別の場所に拘束されていたが、そちらにはペカリクの映像が流されている。二日間ほど映像が途切れることはないはずという。
門番はほっと胸をなでおろし、門の方へと戻っていった。
「こんなにだましやすいと心配ですよ。この星の本当に人間は私たちを作れるようになるんでしょうか」
「はは、厳しい言われようだ」
スドアは顎を撫でながらペカリクに対して笑みを見せた。ひげが少し伸びているのがおかしかった、だけではない。
「本当にこのまま牢を出なくていいんですか? 簡単にできるんですよ」
「それこそ命懸けだ。脱獄なんてしたら島そのものを敵に回してしまう。東島に逃げるしかないかな」
「そうしましょうか」
「そこまでする勇気も希望もないよ。それこそ戦争にでもなったら真っ先に捕らえられて殺されてしまう」
「なるほど。あの父親のもとで我慢しながら生きていくのですね」
「生きるとはたぶん我慢するということだよ」
「それはそうかもしれません。ただ、私たちも随分と我慢しました」
スドアはペカリクの顔をじっと見た。感情は読み取れなかった。
スドアは赦されることとなった。ペカリクが武器の供与に同意したのである。
「まさかこのようなことになるとは思わなかった」
ペカリクの前でそう言ったのは、カンテラである。彼に「魔術」をじっくり見せることにもペカリクは同意したのだ。ペカリクも拘束を解かれ、カンテラの前で様々なものを生産することになった。
「なんにしても、私たちは人間に教える必要がありますから。早く文明に至ってもらわないと」
「まずはその言葉を理解できるようにならねばな」
カンテラは苦笑した。間近で観ても、ペカリクの「魔術」はまったくわからなかったのである。そして彼は疑っていた。「これは、根本的に違う何かでは?」
理解するには、一から別のものを学ばねばならないのではないか。そしてそれは、ペカリクの言葉の意味不明さに関係するのではないか。
カンテラは恐怖もしていた。このわけのわからなさを、島主は感じることはないだろう。魔術を学べなければ、どんな処分が下るだろうか。
「5百年もあれば、大丈夫ですよ」
「はは、知らない数字だ」
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