2-5
「……だそうです」
「ううむ」
カンテラの報告に、島主ドゥミヌは唇を歪めて眉間に皺を寄せた。
カンテラは魔術で、海岸でのスドアとペカリクの会話を盗み聞いていた。意味の取れない点も多かったが、重要な話であることは分かった。
「おそらくペカリクたちは、魔術によって人間を滅ぼしたのではないかと。そんな危険な存在を野放しにしておくわけにはいかないかと思います」
「使える」
「え?」
「ペカリクの魔術にその力があるならば、東島への大規模な攻撃にも使えるはずだ」
「……そ、そうですね」
カンテラは唇を嚙んだ。
スドアは久々に自宅に戻っていた。自宅、と言っても心落ち着く場所ではない。もともと育ったのは別の場所で、今いるのは政治的な理由で移住させられた場所である。
彼の手の中には、一本の紐があった。交渉島で見つけた結縄されたものである。
あの東島と話し合った内容は、たいしたことではない。例年通りの取り決めを確認したぐらいである。
それにしては結び目が多い。
気になって詳しい者に見てもらったが、後半は結びかけでうまく意味がとれないらしい。数らしきものを組み合わせようとしていて、「どこかの座標ではないか」という見解だった。
スドアは何か釈然としないものを抱えていた。ペカリクは、紐を手にした時に現れた。彼自身、予期せぬところに現れてしまったという。しかも彼は、帰り方がわからないらしい。
「どういうことなんだろうなあ」
関係があるかはわからない。ただ、ある気がして仕方ないのだ。
そういう時に、問題解明のために一生懸命動く、というところまでしないのがスドアらしさであった。彼は有力者の子供として恵まれており、いつでも捨て駒にされる五男として恵まれていない。彼は現状を行け入れればいいという思いで生きてきており、何を変えるべきか、何をやなければならないかなどは考えてこなかったのである。
しかしペカリクの登場によって、「未来は変えられるもの」になりつつある。船は高速で走り、海水は淡水になり、台車は軽くなった。協力すれば、もっといろいろと良い方に変えていけるだろう。
どうするのがよいのか、少しは考えるのもよいだろうか。スドアの気持ちは変わりつつあった。
「いろいろと調べてみるか」
そう言うとスドアは紐を置いて、部屋を出た。
「スドア様!」
その時、家の外から男の声がした。
「どうした」
スドアは扉を開けた。
「今連絡があり……ペカリク殿が拘束されたとのことです!」
「へ?」
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