≠18:反骨ぅー(あるいは、格好悪いは悪いけど/さりとてピープル/YAT決戦始まる曜日)
さて。いきなりだけれど。
照りつく太陽の光が、未来感と人工感を漂わせるフラットなこの埋め立て地全土に降り注いでいる――
そう、僕らは遂に、大本番であるところの大会、『魂バティ:サマーカーニバル烈夏‘27:超時空(以下略)』の舞台へと、今まさに、辿り着いたところなのであった……
「……」
僕らはここで戦い、そして勝利を重ね、さらに優勝して天下を掴むためにここへとやって来た……ッ!! 「夏合宿」での成果、それがどれほどのものであるかの、「答え合わせ」、そしてここに至るまでにやってきた全てのことの答え合わせ、それをやる。
既に汗ばみ始めてきている身体の皮一枚のところを流れるように、「やる気」がみなぎり脈打っている、ような気がする。
朝八時半で既にごった返す、りんかい線東京テレポート駅にて待ち合わせた僕ら五人は、夏休み只中の土曜日という、やはりな尋常で無い人出に翻弄されながら、変な緊張感で言葉少なくも、こないだ海に行った時よりも熱く刺すように感じる日射と、周りを包む空気自体が熱を帯びたまま肺の奥まで入り込んでくるくらいの熱射を浴びながら、でも目的地へは数分もかからずに訥々と辿り着いたのであった……台場一等地にそののっぺりとした白壁を晒した、地上34階地下2階建ての巨大ビル群、「台場シーゼアー=アリーナフォート」は五つの高層建物が各々が空中回廊で繋がれていて、真上から見るとそれぞれを頂点とした「五角形」、の内部に一筆書きの星を収めた、そんな形状を呈している。いちばんの特徴は合法カジノがその敷地面積のほとんどを占めるということだけれど、最近では他の用途……例えば今日のようなイベントとか、そういったことに使用がシフトされつつあるとかは聞いたことある。
全国規模の「リアル魂バティ大会」というのはあまりというか今まで無かったので、どんなもんだろうとか思っていたけど、明らかにそれ系の人・人・人の群れがじりじりとひとつところに集まっていっているのを、当の当事者であるところの僕も肌で感じつつある……そしてその群影からはこの台場全体に漂うレジャー感を満喫しようという空気は皆無であり、既にけったいな衣装を装備してたりする面々も勿論いるものの、その全員が一律ガチな空気をその、例えば東京ビッグサイトの建屋を模したであろう精緻な造りの着ぐるみの怒り肩からも立ち昇らせているようで、ただただ無言/無表情のまま何かに導かれるようにして巨大な白亜の建造物へと静かにやけに整然と吸い込まれつつあるのであった……
「皆の衆……気合いは充分であるかな? 我らが臨む『
安定の金属音が、吹き抜け三階相当はありそうなこの高級ホテルのロビーのような巨大エントランスに気障りに響き渡る。言うてることは真っ当ではあるものの、整然と受付待ちの列が出来ている中、そして周りからの結構な人の圧迫感がある中、よくそんな雄叫びじみた声を上げられるね……みとっちゃんはそれこそ気合いの表れなのか、本日はサテン地の暗みを帯びた深緑の光沢が渋い、そして全体的に「令和」と墨痕鮮やかに銀色で描かれたロゴのようなものが英字シャツのように居並ぶ非常に格好の良いシャツを羽織りキメているけど。くっ、背中に<NOVIはYRP・シティ>と大書された薄黄色のTシャツに、下はほどよく色落ちしたケミカルウォッシュの四年物くらいのジーパン、そして白のスニーカーと、前回の前哨戦と同じ出で立ちなれど、画竜点睛、今日は必死で探した「Mercedes-Benzのマークにハチ助を上貼りして隠した高橋名人仕様の縦縞茶色キャップ」を装備してきた僕と甲乙つけがたい
「……もちろん、気合いなんてもんは十全に入りまくってますけど? 突発ルールもまあ全員平等と言えなくもないしね……冷静に的確に対応していくしかないでしょうよぅ……まあうちの司令塔も準備万端だし? 的確指示をばんばん飛ばしてくれることでしょうよぅ……」
そんな、周囲から集められ始めて来たヘイトの視線を、一撃で
「だから出ないって言ってるのは通ってるんだよね? 通って無いってんならまず耳を傾けることから始めようか? 私はあくまで後方支援だからっ」
その横でうんざりとした顔を隠そうともせずに、いつものフリル黒ワンピースをすとりと身につけながら素立ちにて順番を待つばかりの
残る一人も安定のテノールイケボにて、意味はほぼ分からない難解なことを興奮気味でまくしたてていたけれど、僕も緊張からか(あるいは脳の防御機構なのか)全く頭には入って来なかった……まあそんなこんながあったりなかったりで、ようやく僕ら五人も受付で登録確認が完了し、本日のための特別なアプリとやらをDLさせられつつ、ロビー脇の通路にてじゃあ会場でと男女分かれて更衣室に向かおうというそこそこ順調でつつがも何事も無い流れであったのだけれど、ど、せ、
刹那、だった……
「デュフフフフフフ……まさか、初戦で当たることとなろうとは……これまた何たる奇遇、否、なるべくしてなった事象なのかも知れませんぞな? デュホッフホゥ」
明らかに僕らに向けて掛けられた、そのような気味の悪いじめついた低音は、何となく聞き覚えがあった。が、その手の物言いをするタイプの輩は既に胸焼けがするほど呈されて来ているわけで、既視感と初見感がブレンドされたかのような居心地の悪い系の感覚に苛まれながらも、僕は振り向きその声の主を見やる。そこには、
「この前の『前哨戦』ではどうもどうもぉ~、間抜けにも手の内晒してしまったる、迂闊四人衆が方かとお見受けしましたYO!! それはそうと本日はワタクシ、最強メンバーにてこの聖戦に挑みたる所存ゆえ……コポポ、どうぞお手柔らかに、ぬぁんて、言ってみたかった台詞十傑を早くものたまえるとはこれ幸甚……フォコッポッポォゥ……」
シャバという名の土俵の徳俵に、上体は完全に崩れ弾かれているものの左足小指だけが掛かってかろうじて踏みとどまっているタイプの人材だ……「前哨戦」という言葉が無ければ正直思い出せなかった(あるいは思い出すことを脳が拒否していた)だろう、あの例の「何とか三銃士」とか言ってプレで対戦したうちの……ええと、ズィロウさんじゃない方の太っている方だ。迷彩柄の。いや、こんな時こそ先ほど無理やり入れられたアプリを起動だ。
<『ナギ=ス(デザート仕様)』、【KRT:2049】>
そうだ。そんな感じの、おそらくそのおでこに巻いてる迷彩色のバンダナ色構成に由来するのだろう「仕様」が注釈的に付記されている、太りじし脂昆布長髪ティアドロップグラサン(紫)の人だ。というかもう初戦の相手は決まってるのか。そこを調べてなきゃいけなかったよ。
あ、ははは奇遇ですねじゃまた準備してからってことでよろしくお願いします……と根拠不明のヤバそうな場の力を感じ、余計なエネルギーを極力使いたくない僕が手刀を斬りながら穏便に辞そうとしたその、さらにの、
刹那、だった……
「ナハハハハハハッ!! これが
「オァウ~、しかシテ、油断は禁物、それ勝負の、特に初戦ノ心構えタル鉄則でござんショウヨウ~、
変声期がまだ終わっていないんじゃないかくらいの、御大より一オクターブは甲高い金切り金属質声と、地面に埋めたウーファーから響いてくるような不気味な震える低音が、不協和音が一周回って奇跡的に調和したようなハモり方で無遠慮にぶつけられてくる……
思わずさらに振り返ってしまった、ところには、既にこちらへの臨戦体勢を身体全体で表現した大小ふたつの人影が。
ひとりは今この足で天竺を目指して向かったとしても違和感が無いくらいの、いわゆる後発の
そしてもうひとりは長い手足を常に忙しなく動かしつつビートを刻んでいるかのような挙動不審な動きをしている、褐色肌のミラーサングラスの長身青年……だろうか、髭も顔下半分に鬱蒼と湛えていて年齢はよく分からない、さらに分からないのはどんだけの毛量だよと思わせるほどに全方向に展開しているアフロが、どの角度から見ても「♧」の形状を呈してくるという、質の悪い3D騙し絵のような頭部にある……緑・黄・赤の原色縦縞のスーツ上下という、あまりラスタの本場でも見ないようなド派手な出で立ちをしているけど、うぅん、初手からそう来ましたか……
<『
<『アリtoアンドア=キルギステン』、【KRT:2020】>
アプリの展開画面を見やるとそのような「魂バティネーム」と「
と、
「あーはははははは、あーはははははは。誰かと思えばオーナイン嬢の初手一撃であっさり
そのダブル高々度テンションを負の瘴気にて掻き消さんばかりの元祖金属質音にて、みとっちゃんはあらゆるタイプの人間に対しマウントを取る姿勢をここでも貫いてきておる……
もうここまでで心の満腹中枢がヒクついてきた僕だけれど、まぁ誰相手だろうが最早関係ないよね、僕だって気圧されずに臨むまでだッ!!
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