第2話 色んな意味での卒業

「やっとこの学校を卒業できる」


 清々した気持ちで卒業証書が納まっている筒で肩をトントンしていると、見た目にはの親子がにこやかに近付いて来た。

 才色兼備との誉れの高い松永さんとそのお母さんだ。


「初めまして、玲子の母です。水野くんのお名前は、ずっと玲子から聞かされていたのよ。」


 そんな話は初めて聞いたのでオレはまじまじと松永さんの顔を見つめたら……

「水野くんが学年一番のお陰で私はずっと二番だったから」と顔を伏せた。


 ともかくも……彼女も中高一貫校の桜華女子学院へ編入するとの事なので、彼女の親公認の“勉強友達”となり、春休みは毎日図書館で待ち合わせて情報交換をしつつ、机を並べて勉強に励んだ。


 実際中学からの“内部進学組”はが進んでいるから……高1はクラスもの奴らとは別だ。この事情は彼女も同じらしく、オレは同志のつもりで……(正確には)毎日、彼女と一緒に勉強した。


 オレは中一の頃からねーちゃん達の玩具にされていたからオンナなんて慣れっこだと思っていたけど……同学年の美少女から匂い立つ、瑞々しい色香に思わず目が離せなくなった事が少なからずあって、とうとうそれを彼女に気付かれてしまった。


「私の事、見てた?」


「う、……うん」


「私もだよ」


「えっ?!」


「だって水野くん……王子様みたいなんだもん」


「ええ??!!」


「今度、ウチに来てよ。そしたらもっと見つめ合えるよ」


 この……『自分の“美”を行使する』と言う事をオレは彼女から教わった。


 どういう事かと言うと……彼女は自身の“美”というものを充分掌握していたが、ねーちゃん達は自分らがオレを独占する為に結託して……オレをこの事から“目隠し”していたのだ!


 オレはようやく間抜けな自分を脱し、彼女の“初めての男”になる事で、ますます彼女との絆を深めた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る