桃花鳥の行く先

同じ女郎屋で暮らす『少女』に恋をしてしまった『桃花』──物語は少女が吉原を去った四年後から始まる。
生きる目的を失った桃花は、異国からきた通訳の男『藍』と出会い、次第に打ち解けていく。桃花の強さと賢さに惹かれた藍は身請けを申し出るが、桃花は「吉原という籠から、家庭という籠に変わるだけ」と拒む。
けれど、藍は桃花の気持ち次第で自分のもとを去っても構わないと言い、桃花は藍の深い愛情を感じて受け入れる。
二人は山手居留地に移り、桃花は藍の仕事を手伝い活躍する。しかし、ある日 藍は桃花の机の上にある書きかけの手紙を見てしまい……。

国も時代も、性別もこえていく渡り鳥のような女、桃花はどこへ行くのか。
うつりゆく時間の中で生きる人々の優しさと苦しみを、美しい情景と共に描いた恋物語。