第2話 英雄を失った後

 「これからどうなるのだろうか…」


 ドラゴニア王国の首都を取り囲む城壁の上から、夜空を見上げながらぼんやりと呟く。


 王が石化してしまった。


 これは厄災の竜を倒せたとはいえ、ドラゴニア王国にとっては致命傷に等しい。


 ドラゴニア王国はアーサー王が即位してから他の国々を遥かに凌駕する大国となった。食べ物に飢えることなく、外敵に襲われる心配もない。


 それはアーサー王が武勇だけではなく、知恵があったからだ。


 もちろん、この国には優秀な文官の人も沢山いる。武力の面に関しても星剣騎士団がいる。


 しかし、彼らはうまく連携することは厳しいだろう…


 彼らはただ優秀と言うわけではない。凄まじいほど優秀な天才たちなのだ。天は二物を与えないと言うことなのか、そういう者たちは我が強く、どこかイカれている。


 アーサー王の最も優れていたことは、性格に難がある天才たちをもまとめあげるカリスマ性にある。


 彼らは、この国に忠誠を誓ってはいない。


 アーサー王に忠誠を誓っているのだ。


 彼等がどう行動するのか…


 これから、国の今後について考える会議が始まる。


 今すぐに逃げ出したい衝動に駆られながら、現実逃避として空に浮かぶ星を見る。


 「クロ団長、会議がそろそろ始まります‼️」


 声をかけられてしまった…


 憂鬱な気持ちを押し殺して、会議に向かうのだった…

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《会議室》


 この会議を取りまとめるオルドが周りを見渡して言う。


 「全員揃ったな。これから会議を始める。」 


 ここには、ドラゴニア王国の重鎮たちが集まっている。


 会議が始まったのに誰も言葉を発さない。


 誰もが下を向き、口をつぐむ。全員、何かを言わなければと思ってはいるが誰もが行動に移せない。まだ、アーサー王が石化してからまだ数時間しか経っていない。


 まだ、誰も立ち直れてはいなかった。


 「これから国をどうやって運営していくか考えのあるものはいるか?」

 

 オルドは責任感から話し始める。


 「それよりも前に、王の石化を解くのは本当に不可能なのか?」


 言いづらそうに、誰もが知りたいことを宰相が聞く。


 すると全員が一斉に1人の女性を見る。


 「今すぐ解くのは無理。」


 筆頭魔術師であるマーリンはハッキリと言う。


 すると1人の男が机を蹴り、怒鳴り声を上げる。


 「それをどうにかするのがお前の仕事だろう‼️

王の代わりなんていないんだぞ‼️」


 第三騎士団の団長であるヘスティ団長は今にも剣を抜きそうだ。 


 それに対して、マーリンは無言で魔力を周囲に放って一触即発な雰囲気になる。


 オルドは必死に2人を落ち着かせる。


 ここにいる全員に余裕はなかった。


 


 


 


 


 


 

  


 


 


 


 

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王が死んだ後 山椒 雫 @12473647

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