夜をひとつ抱きしめて
だち
第1話
その日、佐伯遥は三度目の命日を迎えた恋人・一樹の夢を見た。
夢の中の彼は、いつも通りの笑顔で立っていた。ビルの屋上の縁に、まるで重力を知らない子どものように軽やかに腰かけて、夜景を背景に「遥、まだ泣いてるの?」と笑う。声は変わらず温かくて、遥の胸の奥の、ずっと触れずにいた場所を優しくくすぐった。
目が覚めると、時計は午前4時を回っていた。
冷たい空気が頬を撫で、毛布の隙間から零れ落ちた涙が首筋を伝っていた。遥は起き上がり、窓を開ける。まだ夜の気配が濃い空に、星が三つ、かろうじて瞬いていた。
「会いたいな……」
それは呟きではなく、呼吸だった。
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