村を飛び出し金を集めて仲間と旅を!

麝香連理

エピローグ

 この村はおかしい!

 産まれてこの方この村で過ごしてきたけど、絶対におかしい!

 俺が何かしようとすると、村長が全部止めさせてくる!夜は出歩くなとか、近くの森に入るなとか、挙げ句の果てには傷付かないように仕事は軽いものを運ぶだけ…………身体は傷付かなくても、仲間からお嬢様とか言われて心が傷付いとるわボケェ!!!



 …………あぁー切れた……なんか思い返したらプッツン来ましたわー………


 こんな村、出てってやる!



 そうと決まれば即断即決!

 ブリューナクのジジイからちょろまかしたこの短剣と………後これとこれとこれとこれ。

 使い古した帽子に縫い直したカバン、遮熱製のマントに保存のきく飯。

 ふっ、我ながら完璧な装備だな!


 



 俺は家の窓からこっそりと外を伺う。

 昔、家を出たら村の大人に捕まって家に戻されたのを良く覚えている。

 今回こそは絶対に捕まってなるものか!



 ………監視だ…………ここはこの石で………!



 ガサッ




「ん?今向こうで音がしなかったか?」

「何?少し見てくる。」

「あぁ頼んだぞ。」


 っし、今だ!

 この場に留まった監視が後ろを向いている隙に俺はその場を駆け抜けた。



 よし、もうすぐ村の外………っ!


「グレンツェン、ダメではないか、こんな夜中に外に出歩いては………危ないから、ほら、帰ろう。」

 一見穏やかに俺を諭すように話すのは全ての元凶である村長だ。

「……………」

「どうした?グレンツェン。何か、嫌なことでもされたのかい?また私が叱っておこう。誰の子かな?」

 このジジイ………っ!

「……………」

 俺は懐から一つの物体を取り出す。

「そ、それはダイナマイトではないか!?グレンツェン!今すぐそれを手放しなさい!それはとても危険なものだ!」

 俺のことをどれだけバカにすりゃ気が済むんだ!

「んなこたぁ百も承知だゴラァ!」

「な!?グレンツェン!?どうしたと………」

「てめぇが気に食わねぇって事だよォ!」

 俺は簡単な火魔法で火を灯す。

「止めなさい!グレンツェン!止めなさい!!!」

「知るかクソジジイ!!!!!」

 俺は思いっきり手に持ったそれを投げつけた。

「ひ、ヒィィィィ!?」

 村長が悲鳴を上げ蹲る隣を脱兎の如く駆け抜けた。

 見えてきたのは月の光を浴びて見える普通の景色。

 道があり、草木があり、動物があり、川がある。

 しかし、それも特別に感じる。


 俺は抜け出したんだ!

 あの地獄のような場所から!







 あ、ちなみにあのダイナマイトは偽物だ。夜だし、村長老い耄れだし、もしかしたら騙されてくれるかと期待したらまんまと嵌まってくれたぜ。




 





 さぁー………………どうやって生きていこうか……

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