第2話  帝国軍参謀本部

 山本長官の元を去った後、まずは山下中将の部屋に訪れた。彼はマレー半島の作戦を指示し、シンガポールの戦いで勝利を収めた名将だ。マレーの虎の異名でも知られている。


 だがまぁそれは未来の話。


 今はただの中将だ。

 

 コンコンコン。ノックを三回すると中から、どうぞと一言。


「失礼する。」


 そう言いながら部屋に入室する。


「これはこれは、森田大臣殿。如何なされましたかな?」


「突然の訪問で失礼。次の陸海軍合同会議のことで少し話があってね。」


 これで合ってるよな?立場関係。こういうの初めてだから分からない。


「話というのは?」


「実は、私、、、いや今は山本長官もか。山本長官と共に陸海軍合同の参謀本部を作ろうという話になってね。それで、、、、。」


「次の会議に出席する私にも協力して欲しいと。」

「話が早くて助かるよ。」


「しかし、どうなさるおつもりで?」


「山本長官には海軍側の調整をしてもらう事になっている。」


「なるほど、山本長官ならば成し遂げるでしょうな。しかし、なぜこのタイミングで?今回以外にもいくらでもタイミングは合ったと思うのですが。」


「このタイミングだからこそだよ。会議の後はすぐに対中戦だ。中国沿岸の制海権は、我々陸軍では取れないだろう?海に詳しい連中がいるんだからそっちに任せるしかない。対中戦後も絶対に陸海の連携ははずせない。この戦争を機に陸海軍のいざこざを無くし完全な協力関係を作った方が良いのではないか?と思ってね。」


「なるほど、一理ありますね。私も海軍の連中はあまり好きではありません。ですがそのいざこざを超えた先にこそ真の大日本帝国の姿があると思います。いいでしょう協力します。」


「君は話がわかる人だと思っていたよ。ありがとう。」


「これも国のためですから。」


「それじゃあ私は次に栗林中将のところに行かなければならないのでね。これで失礼するよ。」


「もし、陸海軍合同の参謀本部が出来たとして、それで戦果があげられなかった場合は、背中に気をつけた方がいいですよ。」


 部屋を出て扉を閉める時にそんな言葉が聞こえた気がした。


 その言葉を聞いて改めて自分がやろうとしている事が如何に反感を買うかを改めて理解した。




 

 ふぅ、さすがに疲れるな。


 次は、栗林中将か。頭がキレると軍内部でも有名な人だ。まぁだからこそこちら側に来させることが出来ればかなりありがたいのだが。


 栗林中将は硫黄島の戦いで指揮を取り数倍ものアメリカ軍相手に一ヶ月も耐えたという。


 栗林中将は人格者でもあり、硫黄島の戦いの際には島民のことと島のことを第一に考えていたとか。まぁ僕はそこまで詳しくないのだが、、、。


 お、ここが栗林中将の部屋か。

 コンコンコン。


「どうぞ。」


「失礼する。」


「大臣殿?突然どうされました?」


「今度の会議のことでね。君に少々手伝って欲しいことができたのでね。」


「なるほど。それで手伝いというのは?」

「陸海軍合同参謀本部の設立に最終的に賛成して欲しい。」


「『最終的に』ということは、一芝居打つということですか。」


「そういうことだ。君が本当にこの案に乗るかどうかはその時に決めて欲しい。」


「陸海軍合同参謀本部の件については私も考えたことがありますのでそちらの方は問題ありません。まずは私が反対してそれに反論。そうして私を賛成側に引き込むことで他の将校からの反論を減らそうという魂胆ですか。」


「さすがにお見通しか。君の頭脳は軍部でも有名だからね。その頭脳を私にひいては大日本帝国に貸してはくれまいか?」


「その程度の事なら、いくらでもお貸ししますよ。」


「では会議当日にまた会おう。」


「あなたの演説、楽しみにしていますよ。」

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