シゴトの流儀

hiromin%2

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 新任の中学教師、K先生は寝不足だった。夜更かしをしてしまったからだ。

 仕事に追われていた訳ではない。先日購入したテレビゲームに熱中するあまり、寝そこなってしまったのだ。

 しかし、学校へ出勤しなければならなかった。酷く頭が痛んだが、単なる怠慢で、欠勤すれば評価に傷がつく。K先生は覚束ない手さばきで車を運転した。


 午前八時に到着した。職員会議まで時間があるので、しばし仮眠をとろうとした。

「おはよう! K先生」

「おはようございます」

「どうかい、レポートの進捗具合は?」

K先生はゲームのことで頭がいっぱいで、レポートのことをすっかり忘れていた。

「だめじゃないか!」

 と怒られた。上司に目を付けられたので、仕事に取り掛かって反省しているフリをした。

――締め切りはまだ先なんだがなあ。

 結局仮眠は取れず、そのまま職員会議を迎えた。


 K先生は二年C組の副担任だった。二年生全員が集合する朝会で、担任のF先生は長々した説教話をしていた。K先生は立ったままうたた寝をしていた。


 K先生は社会の教師だった。チョークで文字を書くのが面倒だったので、事前に空欄のある資料を用意していた。授業では、その空欄を穴埋めしながら進行した。その資料は同じ社会科教師のS先生が作成したものを拝借し改良したものだ。一度作ってしまえば、マニュアル的に説明すれば良かったので楽だった。


「先生! 元禄文化と化政文化の違いって何でしたっけ?」

 熱心な生徒が、授業後K先生に質問した。

「元禄文化は上方の町人、化政文化は江戸の町人によって栄えたんだよ」

「なぜ、それぞれの文化で主役が異なるのでしょうか?」

 K先生は、その答えを知らなかった。

「どうしてだろうね? 図書室で調べながら自分で考えてみるのが良いと思うよ」

「先生はどう思いますか?」

「答えを教えちゃったら、つまらないじゃないか」

 K先生はそう言い残し、去っていった。


 K先生にとって、授業は退屈だった。マニュアルに従うのは楽だが変化に乏しい。しかし何とか我慢して、一日の持ち分を終了させた。


 放課後は部活動を担当しなければならなかった。テニス部の副顧問を務めていたので、グラウンドの隅で腕を組み仁王立ちしつつ、ときどき女子部員を盗み見た。


 部活動が終了し、残業もさっさと終えた。

「F先生、今日は早く上がらせてもらいます」

「君、大丈夫なのかね? 昨日もそうだったじゃないか」

「はい、やらなければならない仕事は終わったので」

「明日の授業の準備はできているのか?」

「はい、完璧です」

 K先生はいい加減に返事をした。早く帰ってゲームをしたかったからだ。


 午後八時、K先生は自宅に着いた。コンビニの惣菜をあてに、ビールをあおった。この瞬間が至福だった。

 食事を終え、早速テレビゲームを開始した。さて、今夜は何時までやろうか?


 K先生の楽しい一日は、帰宅してから始まる。仕事に精を出すなんてばかばかしい。

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シゴトの流儀 hiromin%2 @AC112

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