第22話「さよなら……?」

 あれ? ここは?


 あ、リオル君。

 あんなところにと思ったら、こっちを向いて口を動かした。


 ”さよなら”

 

 と……。


 そして向こうへと歩いていった。


 え、ちょっと待ってくれ!


 追いかけようとしたが……体が動かない!?


 まるで石像にでもなったかのようだ。

 くそ、動け……。


 そうこうしているうちに、リオル君はどんどん遠くへ……。


 そ、そんな。

 頼む、戻って来てくれ。


 お願いだから……。


「リオル君……リオルー!」


――――――


「はっ?」

 そこはあの山小屋だった。

 じゃあ、さっきのは夢だったのか。

 えらくリアルだった……。

 まさか、正夢。



「大丈夫でやすか? えらくうなされてやしたけど?」

 ズーネさんが心配して声をかけてくれた。

「ええ。ちょっと夢見が悪かったんで」

「そりゃ息子さんが心配だからだろな。さ、もうじき夜明けだから準備してくれや」

 ゴリアンさんが身支度しながら言った。

「ええ」


 日が昇り始めた頃に山小屋を出て、ゴリアンさん達の案内であっという間に麓に着いた。


「ありがとうございました。俺は一旦家に戻って家族を迎えに行きますので、これで」

 二人に礼を言って魔法を使おうとしたが、


「待ってくれよ。どうせだから最後まで一緒に行かせてくんねえか? とりあえずとはいえ目的地は一緒だし、いいだろ?」

 ゴリアンさんが引き止めて言い、

「そうでやすよ。このまま去ったらあっしらは気になって夜しか眠れねえでやす」

 ズーネさんがおどけて言った。


「はは……じゃあ、ここに戻ってきますのでちょっと待っててください」

 瞬間移動魔法で家に戻った。




 あっという間に着いて家の戸を開けると、

「あ、帰ってきた。大丈夫だった?」

 ライラが玄関で出迎えてくれた。

 あまり寝てないのか目が赤いな。


「うん。途中で会った人に助けられてなんとかな」

「あのな、都へ行くなら俺に言えよ」

 ライラの後ろにハルスとカンナちゃんがいた、って。


「二人共いつの間に?」

「昨夜お姉ちゃんが電話してきて、それですぐ飛んできたの」


 カンナちゃんがうちの黒電話を魔法で複製して、それを通信魔法で繋いでうちとカンナちゃんの部屋にある電話とだけだが通話できるようにしてくれた。

 ほんとこの子天才だわ。


「って、ハルスは都行った事あるんだろけど、瞬間移動魔法使えないだろ」

「それなら大丈夫だ。魔法力でイメージを送れば行った事無い人でも行けるようになるから」

「え、そういうもんなの? けど一旦は山の麓へな。助けてくれた人が最後まで着いてきてくれるというか、目的地が同じなんだ」

「ああ分かった。じゃあ一休みしたら行こうか」



 

 戻ってきてゴリアンさん達を紹介した後。

「え、魔法で都まで一瞬で行けるのか? そりゃありがたいな。ここから数時間は歩く覚悟だったからなあ」

 ゴリアンさんが嬉しそうに言ってくれた。


「ええ。じゃあ、行きますよ」

 ハルスにイメージを送ってもらうと、本当にその場所が頭に浮かんだ。

 そして、そこを目掛けて呪文を唱えた。


――――――


「おはよう。よく眠れた?」

 スグルが起きていたリオルに声をかける。

「うん。寝れたよ」

「よかった。ベッド藁だし」

「前はゴザ敷いて寝てたから充分だよ」

 ふかふかの布団で寝れるのもやはり幸せなんだなと思うリオルだった。


「おはよ。さ、二人共朝ごはんできてるから」

 コノミが部屋にやってきて言った。

「うん。ああ、またお米食べたいなあ」

 スグルがそんな事を言った。

「え、お米ってあったの?」

「ちょっと前に少しだけね。って知ってるんだ」

「うん、うちにまだあるよ」


「え、ほんと!? じゃあ種籾も!?」

「それは無いんだ。だからどっかに無いかなあって……おじさんが」

「そうなんだあ。ま、気長に探そ」


――――――


 あっという間に都に着いた。

「久しぶりに来たが、前よりマシになってるな」

 ハルスが辺りを見て言う。


 来てはみたが、ここにいるかどうかなだった。

「いるよ。リオル君の魔法力感じられる」

「うん、お兄ちゃんここにいるよ」

 カンナちゃんとココが続けて言った。

 そうか、よかった。


「うーん、あーしはまだ訓練足りないなー、ん? おじさん、どうしたの?」

 何故かゴリアンさんがライラをじっと見ていた。

「え、ああいやすまねえな。結構可愛らしいなと」

「そうでしょー、あーし美人でしょー」


「あ、見回りの兵士がいるでやすね。聞いてきやしょうか?」

 ズーネさんが離れた所にいた兵士さんを見つけて言った。


「お、あいつは知り合いだよ。おーい」

 ハルスが手を振って呼ぶと、

「あ、ハルスさん? お久しぶりですね。今日はどんな御用で?」

 兵士さんが近づいて話しだした。


「いや、迷子になってる黒髪の十歳くらいの男の子の話聞いてないか?」

「え? うーん、あ。町長がそのくらいの子を家に招いてましたよ」

「なんだと? ちょっとは警戒したらどうだよ」

「あの方が人を見誤る訳ないでしょ」

「そりゃそうだがなあ」


「なあ、町長さんってどんな方なんだ? 子供を連れて帰るってヤバい奴なんじゃないのか?」

 俺がそう言うと兵士さんはキョトンとした。


「ああすまん、言ってなかったな。町長はリオル君と同い年の男の子だよ」

 ハルスが頭を掻きながら言う。

「え? そんな幼い子が町長ってなんで?」


「えっと、言っていいのでしょうか?」

 兵士さんがハルスに尋ねる。

「俺が言っとくから。じゃあ、また後でな」

 

 俺達はハルスに案内されて町の奥へと進んでいった。


 そして着いた場所は。

「なんというか神社みたいな屋敷だな」

「ああ。俺も最初見た時は驚いた」


「ここにお兄ちゃんがいるね」

「あー、どうしよ。土下座して謝ろかなー」

「とりあえず正秀おじさんに話してもらお」

 皆が口々に言う。


「あれ、誰か出てきたでやすよ」

 ズーネさんが指した先には……あ。


「え、あ」

 ……リオル君がいた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る