第8話「大いなる意思の導き」

「ん?」

 いつの間にか戸の方に体が透けた二十代くらいかなって男女がいた。

 髪は緑色で頭に竜の角っぽいのが……ああ。


” この度は私達を葬っていただきありがとうございました。これで天に還る事ができます ”

 ココの両親が正座して頭を下げて言った。

 てか正座できるんかい、って。

「いえいえ。ああ、私じゃ不安かもですが息子さんはきちんと育てますよ」


” 不安だなんてとんでもない。異世界から来られた聖者様に引き取られて安堵していますよ ”

 ああ、俺が異世界転移者だって分かるんだな。けどさ。


「私は聖者なんかじゃないですけど、そう言っていただけると……あ、そうだ。もしまだお時間があるならいくつか質問してもいいですか?」


” ええ、どうぞ ”


「じゃあ、ココ君というか神竜族って文字は書けるようですが、喋る事はできないのですか?」

” いいえ、だいたい今のココの歳で喋れるようになります。ただココは私達がこうなったせいか、それが遅れているようでして…… ”

「そうでしたか。まあリオル君のおかげで意思疎通はスムーズにできますので、気長にでいいですよね?」


” はい、よろしくお願いいたします ”


「ええ。あと分かればでいいのですが、疫病ってもう殆ど収まっているのでしょうか?」


” ええ。元凶が消えたようなので、もう起こらないでしょう ”


「元凶……もしかして大魔王みたいなのがいて、そいつがとか?」

 聞いてるとこれ強大な呪いじゃないかって思えるし。


” 私達も詳しくは分かりませんが、何者かが仕組んだ事らしいのです。けど妖魔大帝は十数年前に英雄王様が倒したはずなのに…… ”


「英雄王? 妖魔大帝?」


” ああ、聖者様はご存知ないですよね。では初めから ”


 ココのお父さんが話してくれたのは、かつてこの世界には国家というものは無くあちこちに小さな町や村があっただけだった。

 それでも長い間平和ではあったのだが、百年程前から互いに争いあるいは侵略していったりと、聞いてると戦国乱世のような感じだったらしい。


 そして時は流れ、その乱世に終止符を打ったのがさっき言った英雄王様。

 英雄王様はこの島の生まれでここから統一軍を興し、島を統一した後は大陸に渡って各地を転戦していった。

 

 それをよく思わなかったのが悪の総大将・妖魔大帝だった。

 そもそも乱世を起こしたのはそいつらしく、人々だけでなく竜族や魔族獣人族等ありとあらゆる種族をも争わせて(てかそんなに種族いるんかい)世界を永遠の苦しみで覆いつくそうとしていたとか。

 

 元凶に気づいた英雄王様は長い戦いの末にそいつを倒し、大陸も統一してこの世界に統一国家を築いたそうだ。

 ただその統一国家も建国から僅か十年で滅んでしまった。

 英雄王様や王妃様、跡継ぎの王子様が疫病で亡くなったから……。



「無念でしたでしょうね、英雄王様も……」

 せっかく平和にしたのにそれって。

 神様、あんた何もしなかったの?


” ええ。我が神竜族の長も英雄王様と共に戦った仲間でして、訃報を聞いた時は天を呪ってやると叫んだそうです ”


「そこまででしたか……あの、もう争いは無さそうですか?」


” はい、小悪党はいるでしょうけど戦乱にはならないでしょうね ”


「それならココ君もリオル君も健やかに育てられますね」


” ええ……そろそろ時間のようです。 聖者様いえ正秀さん、改めてココをお願いします ”


「はい。あ、最後にこれも分かればですが、私をこの世界に送ったのは」


” すみません、そこまでは……ただ送られたにせよ迷い込んだにせよ、それは大いなる意思の導きでしょう ”


「大いなる意思……」


” はい。それでは天から見守らせていただきます ”


 そう言って二人はココの傍に寄り、そうっと頭を撫でた後、姿を消した。


「ええ、見守っていてくださいね」

 しかし大いなる意思が何の導きか分からないけど……。


 やるだけやってみるかな。




 翌朝。

「さあてと、今日も畑仕事に精を出すか」

 畑へ向かいながら言ったら、


「きゅーきゅー」

 ココが何か言ってるな?


「えっとね、ボクに任せてって」

「え? いいけど、何するの?」


 俺が聞くとココは高く飛び上がり、


「きゅー!」

 口から光り輝く霧を吐いた!?


 霧が畑全体を覆っていき……それが晴れると、


「……へ?」

「うわあ!」


 さ、作物が畑一面に実っている?


「きゅー!」

 ココが降りて来てガッツポーズをとった。

 それあったんだ。


「って、ねえ。あれって何?」

 俺は畑を指して聞いた。

「きゅーきゅー」

「神竜族の術でね、パパに教わったんだって」


「そ、そうなんだ。これだけあれば当分は安泰だよ」

 野菜も芋も麦もたくさん実ってるもんな。


「きゅーきゅー」

「けどやりすぎたら自然界を守る精霊の女王様に怒られちゃうから、どうしてもって時だけ使いなさいって」

「そうだな。普段は普通に育てような」


 早速収穫していき、種の分は置いといて。



 麦も収穫できたけど、パンって酵母なかったら作れないよなあ。

 調べてみよ……え、自家製のもあるんだ?

 ただ温度を保てる場所がなあ。エアコン効かせて置いとくか?


「リオル君、パンってどうやって作ってたか知ってる?」

「えっと、前は小屋があってそこでだったよ」

 おそらくそこで酵母も作ってたのかもな。

 まあ、ゆっくりやってみよう。


「さてと、収穫のお祝いにバーベキューでもしようか」

「なにそれ?」

「きゅー?」

 二人共可愛らしく首を傾げた。

「まあ、やってみれば分かるよ」


 物置にバーベキューコンロあったんでそれを出し、村に残ってた炭を入れて。


 野菜多めだがそれはいいか。

 肉やソーセージも出して焼いていった。


「どう?」

 

「うん美味しい。それになんかお祭りみたい」

「きゅ~」

 二人共嬉しそうに食べてるなあ。


 こういうのやってみたかったんだよな。


 ……父さん、孫と三代でできなくてごめんね。

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