異世界転移して家族ができた

仁志隆生

第1話「なんでこんなとこにいるんだ?」

 目の前に広がっているのは、何処までも続いているかのような荒野だった。


 ……てか俺、なんでこんなとこにいるんだ?


 えっと、俺の名前は村田正秀むらたまさひで

 年功序列で管理職になったヘボ会社員。

 うん、忘れてない。


 あ、もしかしてこれ、異世界転移ってやつか?

 まさか本当にあるとは。


 というかもっと若い頃にしたかったな。

 俺、もう五十歳だし。

 もしくは転生して子供からの方がよかったな。


 なんて考えても仕方ない。

 とりあえずこの世界がどういう所なのか見てみるか。

 ってなんか自分でもびっくりするくらい冷静だな。




 一時間程歩いてみたが、時々枯れた木や大岩を見かける程度で後は何もなかった。

 もしかしてこの世界、生き物がいないかいたけど滅びたのとかか?

 

 そう思っていたら遠くに建物の影が見えた。

 もしかして誰かいるかも?

 俺はそこを目指して歩いた。




 着いた場所は、おそらく村だったのだろうが……。

 焼かれたのだろう家の跡、荒れ果てた畑。

 さっき見えたのはやはり焼けてはいたが崩れ落ちていない教会だった。

 人の気配は全くしない。


 なんだよ、戦乱でもあったのか?

 

” 助けて…… ”


「え?」

 どこからともなく掠れた声が聞こえた。

 

「おーい! 誰かいるんですかー!?」


” 教会の、裏……お願い ”


 そこにいるのかってこの声、よく考えたら耳元いや頭の中にって感じ?

 いや、今は置いといて行ってみよう。




「……うわ」

 そこには盛られた土がたくさんあり、一つ一つに花が置かれていた。

 奥の方には墓石らしき物もあるからここは墓地なんだな。


「う……」

「ん? 今度はちゃんと聞こえたな、えっと……あっ?」


 隅の方にある盛土の前に誰かが倒れていた。

 小柄で襤褸切れ纏っただけの人というか、子供のようだ。


「あの、大丈夫? って凄い熱!」

「う、う……水」

「え? ああ、これ飲めるか?」

 鞄に入れてあったミネラルウォーターのペットボトルを取り出し、キャップを開けてその子の口元に寄せた。

「うぐ、ぐ」

 なんとか飲んでくれたな、よし。

 とりあえず自分の上着で包んだが、このままじゃヤバい。

 どう見たって何も残ってなさそうだし……。


 ……


「ん?」

 視界の隅が光った気がしたんでそっちを見ると、蛍の光のようなものが浮かんでいた。


「なにこれ?」

 俺が呟くとその光は上下にゆっくり揺れた。

「もしかして、着いて来いって事か?」

 そう言ったらまた上下に揺れて、そこから離れて行った。


「ん、今はあの光を信じるしかないか」

 俺は子供を抱き上げ、その光の後を追った。

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