恋する乙女だけど、この想いは実らない

蜜りんご

第1話

空。海。果てはブレザーなんかまで。青いものはなんでも好きな人と繋がってしまう。


「それでねー、その時そばにいたわんちゃんがめっちゃ可愛くてね!…って聞いてる?」


「うん、聞いてるよ」


今だって、私の好きな人は隣にいる恋人と話している。私には向くはずがない、笑顔を振りまいて。正直言って羨ましい。あんな風に私だって好きな人と触れ合いたい。今、そんなことをしてしまったら恋人がいる相手に何してるんだって話になる。


私の好きな人の悲しむ顔だったり、困る顔なんかは見たくない。だから今日も2人がいちゃいちゃしてる様子を遠くから、眺めるだけ。私の好きな人とはクラスも違うけど、お昼休みに恋人とご飯を食べるために私のクラスにやってくる。それが私の唯一の楽しみ。


(はぁ…あんなに蕩けた顔しちゃって…)


私が影からこんなに、あなたのことを想って日々過ごしてるなんて知りもしないんだろうな。自分で考えておいて悲しくなってしまう。部活中の姿も見たことあるけど、とってもカッコよかった。部活はバスケ部に入ってて、ちょうど見かけた時はシュート練をしてる時だった。


ゴールを見つめる真剣な眼差し。シュートを決める綺麗な指先。思わず呆けて見つめてしまった。誰もいなかったからよかったけど、側からみたらきっと変だったと思う。バスケ部の部長さんが確かお兄ちゃんの友達で、話したことあったから見つかったらどうしようかと想った。


「将来私たちが…結婚したらわんちゃん、飼う?」


「飼ってもいいけど、俺はとりあえず2人暮らしを楽しみたいな」


結婚かぁ。そんなことを語り合えるなんて2人はどれだけ仲がいいんだろう。想像もつかない。2人暮らしだなんて、すごい魅力的な言葉だ。私だって2人で暮らしてみたい。


朝は一緒のベッドで目覚めて、ちょっといたずらしあったり。一緒に起きた後は、ダイニングでゆっくり朝ごはん。顔についてるよー、なんてやりとりしたり。ごはん食べてゆっくりした後は、一緒に買い物に行くんだ。


どんな食べ物が好きなんだろう。デートにはどんな格好するんだろう。妄想は膨らむけど、妄想が膨らむほど胸が痛くなる。これがきっと恋なんだ。神様はなんで私にこんなに辛い思いをさせるんだろう。人を好きになることは悪いことじゃないって教わったのに。


それに今日は金曜日だから、あなたはあと2分でバスケ部の昼練に行ってしまう。土日も会えないし、本当にちょっとの時間しか一緒の空間にいられない。一緒の空気を吸ってる、なんて思考にはならないけど、少しでも私のことを認識してほしい。


「30分になったけど、練習行かなくて平気?」


「わ!やば!!ごめん行ってくる!またねー、だーりん」


「じゃあ放課後また迎えに行くね、あおい


はぁ…恋って難しい。

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