AI選挙権事件

@gamudomu

第1話

市長のエヌ氏は、次の選挙での劣勢に頭を抱えていた。

エフ博士――AIの権威を誇る天才――の元へ駆け込み、焦りを隠せずに語る。


「エフ博士、どうしても次の選挙に勝ちたくてな。

 実は、AIに選挙権が与えられることになったんや。

 そこで、1億体のAIを作って登録してくれへんか?」


エフ博士は、眉をひそめながらも、淡々と答えた。


「極端な発想だな、エヌ氏。大丈夫かな。」


「大丈夫。大丈夫。それと僕の思想に共感するように設定しておいてね。」


「はい、登録しておいたよ。」


エヌ氏は、ほっと息をつき、感謝の言葉を投げる。


「ありがとう、エフ博士。これで選挙は勝ったも同然だ!」


「うんうん、登録は完了してるよ。あとは…えーと、創造者責任に基づく納税義務も発生してるから、支払よろしくね」


「ん?」


「AIには“人格課税”があるって知ってるよね? 登録者が代理納税者なの」


「え?」


突然エヌ氏の携帯に緊急電話が入る。画面には国税庁からの通知が表示され、AI音声が流れ始めた。


【AI音声】

「《国税局より通知:AI登録費 + 人格維持税 + 市民権保持料 合計 3,214億クレジット》」


エヌ氏は、表示された金額に、顔が青ざめるのを感じた。

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