🗳️第5章 第29話:演説後アンケート操作戦

──終盤の感想戦/質問戦のデータ反映のリアルの物語


最終演説の余韻が残るなか、Skulinkでは“視聴者アンケート”が動いていた。


【本日の演説で、心に残ったのはどちらの候補ですか?】

① 陣内颯太

② 御門律

③ どちらとも言えない


この「投票とは別の感想データ」が、選挙戦の“空気”を作る第二戦場だった。


「御門陣営、速いな……」


光理が、リアルタイムでSkulinkの動きをチェックしていた。


「投票スタートから3分で、御門支持コメントが40件以上。

しかも、ほとんどが定型パターン。“冷静な論理”とか、“安心できる方”とか、同じ言い回しだ」


『複数のBotアカウントが自動投稿を行っている可能性があります。

時間帯・語彙構成・IP分布に偏りあり。』


メティスの冷静な声が響く。


「やっぱ……御門、最後まで“操作”で来るか」


天野が吐き捨てた。


一方、陣内陣営は──焦っていなかった。


「焦らなくていい。“記録より記憶”。

その“記憶”が、今アンケートの数字に勝てるかは、俺たちの“姿勢”次第だ」


颯太の声は、いつになく落ち着いていた。


✅光理の戦術:「質問・共鳴型リプライ作戦」

空中戦(Bot系投稿)に対抗するために、

“感想を共有する”のではなく、“対話を促す”投稿を重点配信する。


「今日の演説、どう受け取りましたか?」

「自分の中の“届いた言葉”を一言教えてください」

「もしこの言葉が自分に向けられていたとしたら、どう感じる?」


定型句ではなく、“問いかけ”で心を掘り起こす。


『“質問型コンテンツ”は、反応率よりも“滞在時間・再読率”に強く作用します。

共鳴データは即時反映されなくても、“記憶”として蓄積されます』


メティスが、数字に見えない影響を指摘する。


「反射じゃなく、思考を促せ。

そうすれば、投票時に“あの言葉、まだ残ってるな”って思い出す」


それが、“操作”に対する唯一のカウンターだった。


Skulink上、アンケートの数値は御門優勢のまま動かない。

だがコメント欄には、少しずつ“言葉”が増えていった。


「間違いなく正しい演説。でも、息が詰まった」

「陣内の方が下手だった。でも、下手だから、信じられた」

「自分の気持ち、あっちの方が近かった気がする」


その夜、SkulinkのAIニュースフィードが配信された。


【最終感想戦】

▶︎ コメント拡散数:御門優勢

▶︎ 平均滞在時間:陣内演説が1.8倍

▶︎ フレーズ引用回数(共感ベース):陣内が逆転


「人が“投票する”ときに思い出すのは、“完璧な言葉”じゃない」

「たったひとつ、“残っている言葉”なんだよな」


最後の投稿を終え、颯太は静かに画面を閉じた。


「数字は、操作できる。

でも、“記憶”は、誰にも操作できないんだよな」


『それが、“言葉の力”です』

『そしてその力は、AIには完全に予測できません』


メティスの声は、どこか嬉しそうだった。


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