恋のキューピットはサキュバスさん!?

東池なーが(dotfun)

第1話「バイトで女装してる男の娘、サキュバスと同居する」

 いつも通り、女装系コンカフェのバイトから帰って玄関を開けると—

 そこには、謎の高身長系お姉さんが居た。

「私はリリス・ナイトメア、あなたを誘惑しにきたのです……!ってあれ……?」

 そのお姉さんは、俺を見て明らかに戸惑った顔をする。

「あれ……?ここっ、独身男性の部屋って恋愛最終試験の最初に聞いたんだけど」

 何を言ってるかは、さっぱり分からない。しかし、一つだけ分かる事がある。

「あっ俺、バイトで女装してる”男の娘”だから」

 するとその高身長系お姉さんは、膝から崩れ落ちた。

「なんで……なんでサキュバスの私よりあなたの方が色っぽいんですか……!」

 その高身長系・自称サキュバスお姉さんは、なぜか俺の家に住み着いてしまった。


「それで、魔界にあるサキュバス学校の最終試験として俺と婚約を成立させないと合格できない……と」

 俺は正直半信半疑で聞き、そう返す。

「そうです!私はあなたと婚約しないといけないんです!」

 ……なんか色々と手順を飛ばしてる気がした。

「……っていうかそれが本当だとして、戸籍とかはどうなってんだ?」

 するとリリス・ナイトメアを名乗るサキュバスは、鞄の中からカードを出す。

「こっちの世界の住民票です!”大阪府大阪市天王寺区……夜和リリス”これが私のこの世界の名前です!」

 住民票を見た俺は、ある事に気付く。

「……なんでその住民票、俺の家を住所にしてるんだ?」

 するとリリスはこう返す。

「あなたの……将来の伴侶になる人だからです!」


「あのさ……俺、恋愛感情ほぼゼロなんだけど」

 すると、リリスはこう言った。

「じゃあ……、交尾だけでも!交尾!」

 サキュバスにしては性知識が無さすぎる気がするが、俺はこう返した。

「一夜限りの相手とか、俺そういうの苦手なんで無理ですよ」

 リリスは頭を抱える。

「じゃ、じゃあ、私はあなたと結婚できない……?」

 なんだろう、サキュバスにしても一般常識が無さすぎる気がした。

「まあ、説明を聞く限り俺が追い出したら住処がなさそうだし、とりあえずは俺ん家に泊ってくれ」

 するとリリスは表情を明るくしてこう言った。

「それって……一緒のベッドでお楽しみするってこと……!」

「んなわけないだろ、来客用に布団あるからそっちで寝てくれ」


 翌朝。

「おはようございます。ご主人様!」

「俺は天川玲。ご主人様じゃない」

 リリスはエプロンを着ていた。

「朝ごはん、作りましたよ!そこのテーブルにありますから、一緒に食べましょ!」

 リリスはそう言ってPCデスクのところに焼き鮭・白ごはん・味噌汁の純和食を置いていた。

「冷蔵庫にあった鮭使ったか。夜和さんって、恋愛スキル0なのに家庭科スキルだけMAXなんだな」

「余計な一言があった気がするけど、料理は上手だと自負してるよ!」

 朝食に媚薬が入っているという事もなく、普通に美味しかった。


「次は……なかもず……」

 リリスは何故か通学中の地下鉄に一緒に乗っていた。

 しかも、大学のキャンパスの手前まで一緒に歩いていた。

「なんでついて来てるの」

 俺がリリスにそう聞くと、リリスはこう答える。

「私もここの大学だから……この地域で言う所の”一回生”だから」

 いや、同級生かよ。魔法とかなんやらかんやらで学生に偽装してるんだろう。でもその見た目と露出度で大学生には無理がある。

「その服、帰りに絶対痴漢される格好だから、帰りは俺のバイト先についてきてくれ」

 するとリリスは喜びながらこう返す。

「やったぁ!彼氏のバイト先に行ける!」

 彼氏……なのか?俺はリリスを彼女だと思っていないが。


「次はelse if文だが……」

 プログラミング、JavaScriptの授業。

 意外にもリリスは理解しているようだった。

「これがこれで……」

 リリスは俺よりもタイピングが速い。なにか「タイピングが速くなる魔法」でも使ってるのだろうか。

「夜和リリスさん。ちょっとその服装はよろしくないですね。今度からは気を付けて、学校では露出度の低い服を着てください」

 早速先生に服装を指摘されていた。


「んで?夜和リリスっていう転校生が君ん家に住んでる?しかも自称サキュバスのポンコツ?」

 俺は親友である宮木経に話をした。

「うん。さっき露出度高めの服を着ていたお姉さん系の生徒。自称サキュバスだけど、恋愛経験0どころか恋愛知識も0なレベル」

 経はこう言った。

「あぁ。あの露出ドレスの子か。サキュバスならなんか理解できるわ。でも、大変な事になりそうだな。玲」

「まあ、大変だろうな。ありがとう。経」

 俺は頷きながら昼飯を食べ終わり、食堂を後にした。


放課後。

「次は……恵美須町」

 俺がバイトしている女装系コンカフェは日本橋のオタロードにある。

「玲、入りまーす」

 そう言いながら俺は大学用に来ていたTシャツからセーラー服に着替える。

「あれ、そのお隣の方はお姉ちゃんとかですか?」

 バイト仲間の要奏はそう言いながら、パーカーからセーラー服に着替える。

「あっ、この子ねぇ。なんかよく分からないけどサキュバスらしい」

 俺がそう言うと奏は目を輝かせてこう言った。

「マジっすか!?本当のサキュバスだったら彼女のミモザが見たがりますよ!」

 堀野ミモザ。奏の彼女で大人気コスプレイヤー。

「あぁ。今度予定空けとくわ」

 リリスは更衣室でしばらく待っていた。

「よし!バイトおーわりっ!」

 奏と玲が一緒にバイトを終えると、リリスは突然こう言った。

「なんで玲と奏さんがセーラー服を着てる方が、サキュバスの私より魅惑的なんですか!?」

 リリスは若干涙目だった。

「えっ……リリスさんはかなり魅惑的だと思うけど」

 奏はそう言うと、リリスはこう返す。

「奏さんはそう思うかもしれませんが、私は魔法で”魅惑度”が視えるんです!」

 俺はこう言った。

「ちなみに、その数値はどうだったんだ?」

 リリスはちょっとムッとしながらこう返す。

「玲、93%。奏さん、98%、私、82%……」

 そう言うと、リリスは一人で帰ろうとした。

「ちょっと待って!それじゃあ、着てみる?セーラー服。女性スタッフも来るかもしれないって用意はしてて……」

 そう奏が言うと、嬉しかったのかリリスはすぐに着替えた。

「凄い......!私も魅惑度が93%になったっ!玲と同じ!」

 リリスはセーラー服が小さいのかおへそが出ている。チラッと見えて魅力的な感じだ。

「ちょっとセーラー服が小さいかも知れませんね。今度ミモザと一緒に買い物とかしましょ!」

 奏はそう言って帰っていった。


「なんとか奏が収めてくれた。けどこれが毎日と思うと……大変だな」

 俺は風呂に入りながらそう考えていた。

 すると、突然リリスが入ってきた。

「ちょっ……なんで入ってくるの!ダメダメ!」

 下着姿のリリスに驚いた俺は急いで扉を閉める。

 しかし、俺はこんな事を考えてしまった。

「やっぱ……おっきいな。リリス」

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2025年12月27日 10:00
2025年12月29日 10:00
2025年12月31日 10:00

恋のキューピットはサキュバスさん!? 東池なーが(dotfun) @higashiike_naga

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