第ニ章 彼の浮気相手
私の名前は、梨花(りか)。
私には、高校時代から付き合っている彼氏がいる。
背が高くて、優しくて、ちょっぴりドジな所もあって、そこがまた可愛いんだけど。うふふ。
そんな彼にも、一つだけ不満があった。
それは、スマホを持たない事。
今時、スマホを持ってない人なんている?って感じ。
物覚え悪いし、機械音痴だし、スマホが無くても別に困らないと言う。
だけど、私は、そうはいかない。
彼と連絡取りたくても、家の固定電話。
彼は、実家暮らしだし、固定電話に掛れば、家族が出るのが確率高い。
彼には、妹がいるのだけれど、妹が出た時は、そこまでないのだけれど、お母さんやお父さんじゃ……ね。
緊張して、ろくに話も出来ないというか、『愛してる』や『大好き』なんて言えないじゃない。
LINEだったら、言いたい事も言えるし、何より、スマホから固定電話に掛けると、電話料金がヤバいのよ。
だから、彼には、スマホを持って欲しいの。
分かるでしょ?
ある日のデートの日。
彼がとても嬉しそうに、待ち合わせ場所へ、やって来た。
「梨花!喜べ!ほらっ!」
そう言って彼は、カバンの中からスマホを取り出した。
真っ赤なスマホは、キラキラと眩しく光っていた。
「えっ?スマホ?どうしたの?」
「買ったんだよ、梨花の為に。中古だけどね。」
あははと明るく笑う彼。
「中古って……前に使ってた人がいるって事?」
「うん、安かったし。まだ新品みたいだしさ。慣れるまで、これでいいかと思って。」
「スマホ買うんだったら、教えてくれれば良かったのに。新品でも、安いのあるよ。」
「梨花を驚かせたかったんだよ。いいじゃん。俺、このスマホ、気に入ってるんだ。友達も出来たし。」
フフフと嬉しいそうに笑いながら、彼は言った。
「えっ?友達って?」
「ゆりちゃん。」
「はぁ?!ゆりちゃんって……女の子なの?」
「そうだけど、何か?」
そうだけど……って。
そんな平然と言わないでくれるかな?
「私……嫌だな。」
「何が?」
「何がって……。他の女の子と連絡なんて取って欲しくないよ。」
少し拗ねたように私が言うと、それまで穏やかだった彼の顔が変わり、凄い形相で私を睨んだ。
「なんでだよ!ゆりちゃんは、一人で寂しいんだよ!梨花、お前って、意外と冷たいんだな。」
「何言ってるのよ!当たり前じゃない!私達、付き合ってるのよ?!彼氏が他の女の子と仲良くするなんて、気分いいわけないじゃない!」
「……分かった。だったら、別れよう。俺は、ゆりちゃんが大切だから。」
「何よ、それ!私より、ゆりちゃんって子が大切だって言うの!」
「そうだよ!」
「……バッカみたい!」
こんな事なら、彼にスマホを持てなんて言うんじゃなかった。
こんな喧嘩別れをする為じゃなかったのに。
彼と別れて、一ヶ月が経った頃、彼の妹から連絡があった。
あれから、彼が行方不明らしい。
家にも帰って来ず、会社も無断欠勤しているという。
「ゆりって子と一緒じゃないの?」
「えっ?誰ですか、それ?兄の知り合いに、ゆりって子いませんよ?それに兄は、梨花さん以外の女性と付き合うような、そんな人じゃありませんから。」
彼の妹の話に、私も、確かに、そうだと思った。
彼と付き合って5年になるが、今まで浮気なんてしなかったし、他の女の子と付き合うなんてなかった。
私は、スマホを取り出す。
最後に、彼からもらった電話。
無言電話だったけれど。
『〇〇〇ー✕✕✕✕ー4444』
彼は、いったい、何処に行ったのでしょう?
そして今、何をしているのでしょうか?
もしも彼を見かけたら、戻ってくるように伝えてもらえませんか?
ー第ニ章 彼の浮気相手【完】ー
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