第10話 次の探索
放課後。
いつものように公園のベンチに集まった3人の表情には、まだ昨晩の興奮と緊張が残っていた。
秋人はバッグから布に包んだポーションを取り出し、静かにベンチの真ん中に置いた。
「まずは、これだな……」
青い液体が詰まったガラス瓶は、昼間見るとさらに神秘的に見えた。
リクはおそるおそる手を伸ばし、ガラスの表面を指でなぞる。
「飲んだらどうなるのかな。怪我が治ったりするやつ……だよね?」
「まだ断言できない。もしかしたら毒って可能性もある」
秋人は慎重に答えながら、スマホを取り出し、似たような液体をネットで検索してみた。
だが、当然ながらホームセンターのダンジョンで拾った「ポーション」など出てくるわけがなかった。
「そもそも現実のアイテムじゃないだろうからな。試すなら……」
「怪我したとき、か」
蓮が静かに自分の腕を見下ろした。昨日ゴブリンから受けた傷は、軽く赤くなっている程度だが、包帯が巻かれている。
「お前、まさか今試すつもり?」
「いや、まだ必要ねえ。次、もっとヤバいことがあったら試す。これ1本しかないからな」
蓮の言葉に、2人は頷いた。
「じゃあ、これは保管ってことで……次の作戦考えないと。今度はちゃんとマップあるし」
秋人は手帳に書き写したマップを広げる。ダンジョン内の通路、部屋、そして赤丸の印。
「次はこの赤丸まで進みたい。多分何かがある。それに──またゴブリンに遭遇する可能性も高い」
その言葉に、リクの顔が一瞬強ばった。
「やっぱ、また戦うんだよな……?」
「戦わないと進めないだろ。でも今度はもっと上手くやる」
蓮が静かに言う。
「前回は俺が正面、秋人がサポート、リクが隙を突いた。次もその流れでいい。でも、もう少し連携を意識しろ」
秋人は頷き、さらに言葉を続けた。
「そうだな。まず蓮が前衛で敵を引きつける。俺は周囲を警戒しつつ攻撃と防御。リクは後ろからスリングショットで牽制と索敵──どう?」
「いいと思う!後ろなら……頑張れる気がする」
リクがホッとした顔でうなずいた。
「装備も見直そう。安全靴は昨日手に入れた。あとは防具とか、使える道具も追加しよう」
秋人が手帳に書き込んでいく。
• 金属バット(蓮)
• バール、ナタ、マルチツール(秋人)
• 園芸杭、スリングショット(リク)
• 安全靴(全員共通)
• 軍手、ヘッドライト、マーキング用チョーク、ロープ、ビニールシート
• 非常食と水
「道具はこれで問題ない。あとは俺たち自身の準備だけだ」
「それって?」
「心構えと、動き方。次にゴブリンが複数出てきたらどうするか、とか」
リクの顔が少し青ざめたが、秋人は静かに言った。
「俺たちはもう普通の中学生じゃない。命懸けの場所に足を踏み入れてるんだ。現実として考えて、ちゃんと準備しよう」
沈黙が流れる。
やがて蓮が軽く鼻を鳴らした。
「そういうことだ。次も全員で帰るぞ。それだけは絶対だ」
その言葉が、3人の心を強く結んだ。
次の探索は、もう目の前だった──。
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