第4話 退院おめでとう。


命のタイムリミとがはっきりわからないのは、いいことなのか、悪いことなのか。

この頃の僕は、人が生まれて、死んでいくこの人生という事に対して、深く考えるようになっていた。


実際に僕も余命宣告を受けてから、一年。タイムリミットは過ぎているはずなのにまだ息をし続けている。本当の意味での現実には今は向き合えていない。

桜に出会って、この命に限りがなければこのままずっと。


いや、違う。この命に限りがあるからこそ、今を大切にして生きていけるのかもしれない。そう考えるようになっていた。



桜「この前外に出た時に思ったんだけど、春、顔がこけてるぞ〜!?太陽に当たって目立つよ!!」


僕「桜。そーゆーのは黙っておくものなんだよ。僕も最近気になっていたのに。君のせいで、僕はもう、、」


桜「えっ、ごめん。そんなつもりなくって。私はちゃんとご飯食べてるのかと思って。ごめんね。私の気にしすぎだったかも。」


僕「いや、冗談だけど。君は初めて出会った時から、真面目なのか適当なのかわからないよ。」


桜「なるほど。これは許せないな!私は自分の部屋に戻るんだから、あなたはもう私をやたらとこき使うことはできないぞ!!」


この時の会話中。桜の顔色はいつもよりも悪く見え、心なしか、元気いっぱいという感じではなかった。


次の日、桜は丸々一日、顔を見せなかった。

怒らせてしまったのだろうか、隣の桜の部屋はいつもよりも静かだ。


次の日桜が来た


桜「春〜、私ねもう直ぐ退院すると思うんだ。だから起こしてくれる人いなくなりますね〜」


僕「退院!?よかったじゃん!会えないのは寂しいけど、桜が160年生きられそうで、よかったよ!一人で起きれるし、、笑」


桜「ごめんね、私が先だったね」


僕「退院しても僕が死ぬまではお見舞いに来てよね」


桜「そんなの当たり前でしょ。」


この日の僕は寂しさと嬉しさで複雑な気持ちだった。


それから二週間ほどはいつものように僕ら二人は特別な時間を過ごした。

この二人の時間は永遠に続いたらいいと思ったし、僕は尚更このまま生きていたい。

そう願ってしまうようになった。


毎日会っていた僕らも桜の退院が近づくにつれて、桜の方の準備が忙しいのか、会うことが少なくなっていた。


そうして桜の退院予定日の3日前の朝、騒がしい病院の空気で目が覚めた僕は何が起こっているのか把握するために、動かない体を精一杯に動かし、部屋の外に出た。


看護師の皆さんがただ事じゃない表情で入って行ったのは。



、、、桜の部屋だった、、、


このタイミングで、桜に何かあったのか。

もう直ぐ退院だと聞いていたのに。


僕は、そこから、いろいろなことを考えた。


だが、一番初めに考えついていたその答えが、正解だった。



こんな時も僕は。


まだ君の笑顔が見れるのではないかと、心のどこかで願っていた。

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