【コミカライズ】婚約者がいるのに、恋に落ちてしまった。婚約者と。
有沢真尋
第1話
イアン・マシューズとルイーズ・バークは、婚約者同士である。
子どもの頃に両家の親同士が取り決めて、良いも悪いも本人から意見をさしはさむ余地はなかった。
ルイーズの母は言う。
「婚約者は、面倒避けにはうってつけなのよ」
美貌で知られたルイーズの母は、そのことにより幼少時から年頃になり結婚するまで、ずいぶんな苦労があったという。
大人がわずかに目を離した隙に誘拐されかけた件から、美貌が噂になり始めてから金満家が金を積んで家に押しかけ妾や後妻にと迫った件まで、枚挙にいとまがない。ルイーズの母の実家は、祖父の散財で没落しかけて傾いており、父は「娘を売り渡すほど落ちぶれていない」とプライドはあったものの、事業で無理を押し付けられたりするなどして、娘への縁談を断るのにはその都度難儀していたという。
イアンの母もまた、奇しくも似たり寄ったりの経験をしていた。
晴れて夫となる相手とめぐりあって婚約を結び結婚をした後、それまでよりぐっと身の回りが安全になったと感じたという。
こうして両家の母たちは「子どもの頃からナイトがそばにいて、年頃になっても『婚約者がおりますので』のひとことでかわせたら、ずいぶん楽だったのに」との思いを抱いており「面倒避けのためにも、婚約者は早めに決まっていたほうが良い」と意見が一致したとのことだった。
二人の夫も特に異を唱えることはなく「それなら、こっちは気心の知れた学生時代の友人同士で、子ども同士が結婚したら良いなぁなんて言っていたから」との見解で、婚約はあっさりと決まった。
イアンのマシューズ家は子爵で、イアンは跡継ぎ。ルイーズのバーク家は伯爵で、長男が家を継ぐのでルイーズは他家に嫁ぐことになる。子爵夫人ならば申し分ない。
こうして、両家の両親の前向きな考えのもと、物心ついたときにはすでに、二人は婚約者同士だった。
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