第2話

あ?」


思わず声が出た。それもそのはず、今入った路地の入り口が壁になっていた。


「極めつけには迷子かよ。帰ったらふて寝しよ……」


(マップ見て帰ろ)


内心焦って地図アプリを開いたが、画面に地図は映し出されなかった。


「回線は……悪くないな? じゃあ、なんで?」


焦りのあまり、口に出た。


何度もアプリを立ち上げたり落としたりしたが、なんの意味もなかった。


(訳わかんねえ! んだよこれ!)


恐怖のあまり半ギレになりながら、スマホの画面を何度もタップした。

が、意味はなかった。エラー表示だけがアプリ画面に映っていた。


「なんなんだよ! どーせまた不幸の始まりだ! クソが」


舌打ちして、悪態をつく。


辺りを見渡すと、道は目の前の一本しかない。


「まぁ進むしかないと。はいはい、色々起こりすぎてもはや冷静になったわ。もうこのままイセカイテンセイ?

してくれたらいいんだけど」


自分を鼓舞するために、軽口を叩いてみる。


一日の出来事を思い出しながら、ゆっくりと歩いて行く。

フラれて、叫んでたのを親に聞かれ、失恋相手と再会して、めちゃめちゃ気まずくなる。


「んで、迷子かよ。しかもこの道、なんか……ヘン? だな」


(景色がずっと変わり映えしない? てか、変わってねぇ?)


その瞬間、嫌な予感がよぎる。


(都市伝説とか神隠しみたいな奴だったらどうなんのかな。俺、死ぬのかな?

なんかでも、もうずーっと不幸だから、不幸を味わわないと思うと、それも……)


弱気な考えが頭をよぎり、下を向く。


下に見えた影は、明らかに自分の形ではなかった。


瞬間、後ろを振り向くと、自分より遥かに大きい男がこちらを凝視している。


背丈は2メートルはあり、変な柄の黒い足首まであるマントを羽織り、靴さえも黒。

その男は、ずっと真顔だった。


「ぎっ!」


声にならない声。凄まじい恐怖だった。


(後ろに道はなかった。なら、こいつはどうやって後ろに来た?)


「能力は」


「……は?」


いきなりの予想外の質問に、戸惑った。


「どんな能力だ」


男は構わず尋ねる。


(訳わかんねぇ……こいつがイカれてんのか?)


「訳わかんねぇよ! 今迷ったんだよ! 助けてくれぇ!」


修斗に、まともな受け答えをする頭は残っていなかった。


「芽生えていないのか。なら、芽生えさせるまで」


男は内ポケットから、ゆっくりと――しかし迷いのない手つきで、ナイフを出し、振りかぶった。


「なにぃぃぃぃぃ!」


振り返って、修斗は思いっきりスタートダッシュした。


(訳わかんねぇ、訳わかんねぇ、訳わかんねぇ、訳わかんねぇ!)


「ふざけんなぁぁぁぁぁ!!!」


その叫びは、追ってくる男以外に届かなかった。

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