連鎖する鎖 <チェインフック>

チョビもち

第1話

なんでだぁぁぁァ!? なんでいつもこうなるッ!!」

少年が部屋でバンバン机を叩き、喚く。


少年は、そのエアコンがガンガンに効いた部屋で座り、机に突っ伏している。

鎖真修斗くさりましゅうとの人生は、不幸の連続だった。

学校でのテストは、勉強したところだけ出ないし、迷子の少女を助けようとしたら、ガラの悪い兄貴が来てヤベー奴と勘違いされ、ボコられた。

天気予報関係なく、マラソン大会などの嫌なイベントでは雨は降らず、フィールドワークはほぼ豪雨だった。


今はというと、失恋の余韻で非常に悲しんでいる。


「なんで告白の前日に彼氏ができんだよッ! そんな素振りなかった上に、このパターン3回目!!」

「高校生になったら何かが変わると思ったんだがなぁ〜…… はぁぁ、桜ちゃん……うぅ」


決して、このような不幸は修斗が原因ではない。

テストの設問も、異性関係がうまくいかないのも、単なる不運だった。

彼は身なりを整えているし、少し目つきが悪いだけで顔もそこそこ。

友達も人並みにいるし、性格も少しお人好しだが、イイヤツだ。


「は〜……コンビニに菓子でも買いに行くか!! 切り替え切り替え!! ……はぁ」


修斗は買い物の準備をして階段を降りると、そこには今出かけているはずの母の姿があった。


「でぁっっっ!」


思わず変な声が出た。


(聞かれてた……ま〜じで最悪だ)


心の中でそう呟き、そっと家から出ようとした時、テレビの前から母が近づいてきて、聖母のような顔で修斗の肩をポンと叩き、


「まぁ、なんだ、そのぉ〜……そういう時もあるよな……わかるよ、私も……うん」


と苦笑いで慰められた。


「うわぁぁぁぁぁ!!」


母から逃げるように、修斗は家を飛び出した。


「今日は特に散々だ。16年生きてきた人生の中で、特によ〜」


そうぼやいてコンビニに入り、アイスを選んでいると、後ろから肩を叩かれた。

そこにいたのは、見知った顔……まさに3時間前にフラれた桜ちゃんだった。


「あっ」


お互いに思わず声が出る。


そして修斗の肩を叩いたのは、なんと元々入っていたバスケ部にいた2年生の先輩だった。


「やっぱ修斗じゃ〜ん! 元気してたか! 部活やめてから喋んなかったからさぁ〜気になってたよ、みんなぁ」


「桜、いま『あっ』って言ってたけど、知ってんの?」


と隣にいる桜に尋ねる。


「へ……へへ」


(呼び捨てなんだ……)


修斗から三下のような作り笑いが出た。


そんなの気にせず、先輩は喋り続ける。


「お前が部活に入って少しした時の練習で、滑って転んだ挙句、3年に踏まれて片足全治3ヶ月になって部活抜けた後、み〜んなお前のこと心配してたんだよ。いや、まじでさ〜」


「桜、クラス同じ?」


「う……うん」


「あー! そうなんだ!!!」


気まずそうな二人をよそに、先輩はニコニコして話していた。


「ねぇ、あやと……アイス溶けるしさ……もう行こ?」


「ん、確かにそうだな。じゃ、また〜」


修斗は今にも泣きそうだったが、涙を堪えて会計を済ませ、店を出た。


「鉢合わせないように回り道しよ……」


下を向きながら、悶々と考えを巡らせる。


(不幸エピ聞かれた上に見せつけられたし、まじクリティカルヒットって感じだ)

(薄幸体質ってよく言われるが、そんなレベルじゃねぇ! 超濃厚不幸アクシデントマシマシ気持ち辛め!!)


「はぁ、ラーメン食いたくなってきた。引き返そっかなぁ、ハハ……はぁ」


細い路地を通りつつそう呟き、後ろを振り返ると、入ってきたはずのそこは――壁だった。

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