届かない“またね”

まさか からだ

第1話 届かない“またね”

何も言えなかった

さようならも、ありがとうも

吐きかけた息さえ、

喉の奥で凍りついたまま


ただ、あなたの背中が

遠ざかっていくのを

黙って見送るしかなかった


わたしの声は

もうあなたには届かない

そんなこと、とっくに

わかってたのに


心だけが

どうしても追いかけてしまう

痛みをわかっているのに

それでも、最後に

「またね」って言いたかった


その一言だけが

わたしのすべてだったのに

あなたは

一度も振り返らなかったね


でも、わたしの中では

まだあなたが笑っている

もう届かない場所で

まるで、なにもなかったみたいに

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届かない“またね” まさか からだ @panndamann74

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