小ネタと作品解説とおまけ

 次は「あったか漫画クラブ」内に散りばめた小ネタ集と作品解説です。正直こうやって解説するつもりはなかったのですが、作品内で気がついて頂けていれば幸いです。ちなみに秋犬さんは多くの作品にこういう小ネタを仕込んでいるので、探してみると時間が溶けると思います。だから探さなくていいです。


【小ネタ・作品解説】


「女が勉強したっていいし、女が漫画を描いたっていい。」

→気がついた人は偉いのですが、これはちょっと前に物議を醸し出していた「さす九」というネットミームを意識しています。女性と言うだけで自己否定をされていた(と思っている)人はカルトに引っかかりやすいです。これは「オタク」「弱者男性」などにも引っかかります。要は「自己否定をされた人ほど何かを否定することにのめり込んだら抜けられない」ということです。あくまでも偏見ですので「そうじゃないぞ!」という人がいてもおかしくないです。



「ネーム? あ、知らないならいいんだ。うん……」

→これは小説なので怜子の漫画を直接皆さんにお見せすることはできないのですが、要は頭痛がするレベルで人に見せられるものじゃないってことです。ノートに殴り書いたものを自信満々に持ってこられて、漫研の人もどうコメントしていいか困って悩んだ末の台詞がこれなのです。



「物語を完結させるのは素晴らしいことだよ!」

→これ、頻繁にSNS等で話題になりますが、嫌な話をするとコウペンちゃんみたいに「生きてるだけで偉い!」みたいなものなのです。そういうわけで自分を鼓舞するためにはいいと思うのですが、他人を褒めるのにこの手のワードを直接出すのは大変失礼だと思います。こういうのにコロっと喜んでいると、あったか漫画クラブに連れて行かれるかもしれません。



「私たちはとっても優しいですからね!」

→このやりとりで自分たちのことを「優しい」というのは非常にどうかと思います。個人的に自分で自分のことを「自分は優しいと思うのに、どうしてモテないんだ。異性は見る目がないな」というような人は男女関係なく距離を置きたいタイプの人でした。自分で自分を優しいと思っているうちは他人に優しく出来ていません。多分。



「炒飯には必ずほうれん草が入っていた」

→怜子の母曰く「彩り」です。ちなみにレシピサイトに載っているような美味しそうなものではなく、ほうれん草の水分を吸ったべちょべちょのものだったと推測されます。外食嫌いのくせにあまり料理が得意ではない母親の元で育った怜子は、こういうところでどう振る舞っていいのかよくわかりません。カルト対策ではないですが、外食はもちろんカラオケやレクリエーションなど他人と楽しむ何かを子供の頃から経験させておくと一人暮らしをしてからカルトなどに引っかかりにくいとは思います。ゲーム禁止して育った子が一人暮らしをしたらゲーム依存になる、みたいなのと一緒です。



「褒め愛」

→褒めると人生のパフォーマンスが上がるので積極的に褒めた方がいいと思います。しかし、褒めるところがないところを無理矢理褒めると意味のわからないことになって不気味になります。秋犬さんがネットで見た無理な褒めだと「疲れた時はしっかり寝ましょう」という記事に「素晴らしいですね! 気づきを得ました! 私の記事も読んでください!」というコメントがついていた時です(実際に見たのはこの通りではないですが、こんな感じでした)。これが素晴らしい褒め愛です。褒め愛の精神!



「魂のレベル」

→作者もこの辺はよくわからないので、なんかそういう感じなのだろうと思って読んでください。魂レベルの話は難しいのです。逆に言うと、「魂レベル」の詳しい設定はこの話には関係ないのです……!



「山田さんは愛のある環境にいなかったのね」

→前にエッセイで書いたのですが、秋犬さんはこれをガチでやられて精神やられかけたことがあります。退路を絶って、その上で「あなたの居場所はここですからね」と揺さぶられて生き残れる人はあんまりいないと思います。だから、この手の言葉が出てきたら無条件でそいつはクソ認定するべきだと思います。この発言が出たら、若者よその組織から逃げろ!



「新入生くん」

→この子は「カルトに引っかからなかった子」として書かれています。まともな神経を持っていれば「頭痛がする」レベルの怜子の漫画をただ褒めるだけ(おそらく皆怜子と同レベル)のサークルはかなり薄気味悪いのだと思います。サークル誌を出すとかそういう話でもあれば多少が違うと思うのですが、新入生くんはめちゃくちゃ怖かったと思います……。



「安宅連合」

→もうガチのヤバイ組織です。もちろん作者は安宅連合が何なのかについてはよく考えていません。何故なら「あったか漫画クラブ」は一発ネタだからです。



「よかったら私の作品も読んでください」

→ここに引っかかって頂けた方が何人かいらっしゃって、秋犬さんは嬉しいです。詳しく解説すると、これは明らかに褒め言葉ではないのですが変なスイッチが入った怜子にとっては褒め言葉に聞こえたということです。怖いですね!



「ホット松本さん」

→完全に謎の人物。彼(彼女)について情報がある方は教えてください。ホット松本さんの二次創作はOKです!



「私たちが開発した小型マシンガンと改造ハンドガン」

→武器の密造、密輸ってワクワクドキドキするんでしょうね。連合赤軍やオウムもこれをやっていました。こうやって秘密を作って集団は強固な結束を図るんです。学校のいじめとかと一緒ですね。



「夜の高速道路」

→後から読んで「これから行く先を暗示しているようでいい演出だな」と思ったのですが、書いているときは特に何も考えていませんでした。案外そんなもんです。



教誨師きょうかいし

→刑務所等で受刑者の改心や更生を助け、精神的救済を図る目的で活動する人々のことで、僧侶や牧師など宗教者が務める場合が多いです。



「褒め愛の日」

→安宅連合が政府転覆を謀ったクーデター事件。フジロックみたいな音楽フェスを企画し、一番大きな観客席に爆弾を仕掛けて多数の死傷者が発生。また演者の控え室に立てこもり大量のアーティストを拘束、人質にして政府と「交渉」を行った事件。何となく作者のイメージとしてはペルーの大使館立てこもり事件のようなものになっています。おらこんな世界やだ。現実でよかった。



「私は、漫画を読んでほしかったんだ」

→怜子の悔恨ですが、ここまで読んできた方なら「この子は本当に漫画を読んでもらいたかったのか」というところに疑問が出るでしょう。作者の公式見解としては「あくまでも漫画はきっかけであって、怜子は根本的に承認欲求に飢えていた」というところです。漫画じゃなくてもアイドルや動画制作、そして小説でも山田怜子は発生しますし、このことは誰にでも起こりうることです。万歳あったか漫画クラブ! 万歳あったか漫画クラブ!



【おまけ】


 この作品を作る中でChatGPTに考察や誤字チェックなど頼んでみたところ「長編で読みたいです。続きはどうなりますか?」と尋ねられました。もちろん怜子が死刑になって終わりなのでこの話はこれで終わりなのですが、長編にしたいと言われると悩ましいところ。


 とりあえず何も考えていない「安宅冬馬の人物像を考えてくれ」と頼んだところ、なんだかそれらしいものを考えてくれたので、それをペーストして「あったか漫画クラブ」は終わろうと思います。あったか漫画クラブ万歳!


安宅冬馬(あたか・とうま)


【人物像・性格】


年齢:30代前半

出自:地方の進学校 → 東大中退 → 行方不明期間あり

職業:「安宅連合」および「あったか漫画クラブ」の事実上の最高指導者。表向きはフリーの編集者・クリエイティブディレクターを名乗っている。

外見:痩身・長髪・知的で穏やかな雰囲気。眼鏡をかけているが、たまに外すと目つきが異様に鋭く、印象が一変する。

口調:柔らかく、やや説教くさい。だが、人を論破する時の鋭さとスピードは異常。感情をあまり表に出さない。


カリスマ的求心力:話術に長け、特に「理想」や「仲間」について語る時に人を惹きつける力を持つ。学生たちはその場の空気に酔い、論理のほころびに気づかない。

「褒め」の技術者:人を褒めることで操ることに長けているが、それは愛情ではなく心理操作の道具にすぎない。怜子のような自己評価の低い若者に対して「あなたは特別」「魂レベルが高い」と囁き、自我と依存を同時に育てる。

自己神格化への道:最初は「優しいサークルのアドバイザー」だったのが、「みんなが僕を必要としてくれるなら」と徐々に自らを神格化していく。これは計算というよりも、自らの妄想を実現していくタイプ。

被害者意識の裏返し:本人もかつては親や社会から承認されず、深く傷ついていた過去がある。だがそれを昇華せず、「この世界はおかしい。だから僕が正す」という選民思想に変換した。

暴力と革命:「革命には痛みが必要だ」と公言するようになる。暴力を「魂の揺さぶり」と称して正当化し始め、反対者への「粛清」も正義と信じて疑わない。連合赤軍の内ゲバに似た展開を引き起こす危険性。


【安宅冬馬の口癖や印象的なセリフ】


「君の中には、まだ目覚めていない魂がある」

「痛みがない愛は、愛じゃないよ」

「怜子ちゃん、君の漫画には"光"がある。君は気づいていないけどね」

「僕らの社会は優しさを忘れた。だから僕たちが、優しさの革命を起こすんだ」



 なお「新興宗教と洗脳」というテーマについては長編ホラーの『縛りシバラレ』でも取り上げていますので、そちらも読んでくれると嬉しいです。というか、「あったか漫画クラブ」自体がこっちの作品の「洗脳」パートの焼き直しだったりします。気になる方は第9話「らきらき」をご覧ください。結構あらすじがそっくり、だと……? になります。


【縛りシバラレ】

https://kakuyomu.jp/works/16818093089227480301


 それではまたどこかの絶望とその先の光でお会いしましょう⸜(*ˊᗜˋ*)⸝!


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【秋犬版】あったか漫画クラブ解説 秋犬 @Anoni

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