4日目

夜。筋肉痛で痛む体を酷使して…何とか私は床から起き上がり、部屋にギルウィさんがいないのを確認して、ため息をついた。


平和的に行こうって思ってたのに、ついカッとなって私の事…全部、言っちゃって…その見返り(!?)としてギルウィさんがいる時は、私がでっちあげた嘘の設定に話を合わせてとか、(半ばヤケクソ気味で)言ったけど…



——勇気を出して、自分の正体を打ち明けてくれたのです。分かりました…そちらに話を合わせます。次また会ったら敵同士…という事でよろしいですね?



「こっちが不気味に思うくらい、話の分かる人間だったなぁ。」


ぶっちゃけ…速攻で斬り殺されててもおかしくなかった…私なら普通に殺してるもん。


【茶番劇がやっと終わりましたか…で、これから、どうするのですか?自称、人類の敵さん(笑)】


出たなルーレットの女神。後、自称をやめろ。


【間抜けなノエルの事です…創造主に会いに行くとかですよね?道中、竜にぶち殺されるのがオチですよ。大体、居場所も分かってないじゃないですか。】


間抜っ…!?いやぁ言うねえ。お陰様でガンガンテメーへの、ヘイトが上がってるよ。火炙り、磔、ギロチン…どう処刑してやろうかなぁ?


【…私は知っていますが。】


な…な〜んちゃって☆てへっ。今のは冗談だからね、ルーレットの女神…それで、何処にいるのかな?かな??


【…ここから南に数キロ進んだ先にある、山岳の頂上にいますが……無様に死にたくなければ急いで、ここから移動する事を推奨します。】


え?


私が動く前に、天井が砕け散り…頭上から炎のブレスが降り注いだ。


………


……



「———♪」


あまりにも美しい歌声や岩の感触で、私は反射的に飛び起きた。


(良かった…ちゃんと再構築されたみたい。)


灰色の瞳…泥で汚れた白い服。6つの宝石が埋め込まれた王冠を被った小学5年生くらいの黒髪。それを母様みたいに長く伸ばしている美少女と目が合った。


「再構築…?あれ、ここは…」


(み、未来から来た旅人さん。ようこそ…◾️が創世した大陸へ。歓迎の準備は出来てないけど…)


少女は歌を歌い続けているのに、不思議と声が聞こえてくる…ルーレットの女神よろしく、テレパシーって奴だろうか?


周囲を見渡すと4体の竜が皆、その歌に聞き惚れていて、幸せそうに首を垂れていた。


へい!ルーレットの女神…この子が、創造主なの?


……。………。…………。


あれ?


(ごめん。◾️がいると…上手く聞こえなくなるみたい。)


あーそういう。ルーレットの女神と同じ回線を使ってるから弱い方が負けたみたいな感じね。


ルーレットの女神、マジザマァ……って!?


「『未来からの旅人さん』発言といい、ルーレットの女神の事も知ってるの!?」


(し…竜さん達が怒っちゃうよ。)


ごめんなさい。もう2度、食べられたくないです。はい。その…改めて聞きますが、どうして、私達の事を知ってたの?


少女はひらひらと舞いを始めて、私もつい魅入ってしまう。


(全知全能だから…かな。何となく分かったの。でも、旅人さんは運が悪いね。)


と…言いますと?


(信じたくないけど…◾️。人間さんと精霊さん達に捕まってもうじき、処刑されちゃうんだ。)


……


少女が踊りを竜達に披露している間…私は外の空気を吸いに洞窟から出た。適当な岩に座って頭を抱える。


「ルーレットの女神…質問があるんだけど。」


【ノエルに、マジザマァと罵られたルーレットの女神ですが何か。】


「…未来を変える事って出来るの?」


数秒の沈黙


【結論を言えば、変えられません。少なくとも大陸で起きた出来事は…確定事項ですから。】


「あの子は人間に処刑されて…死ぬの?」


【はい…それにしても随分とご執心ですね。大方、ノエルの母親を勝手に創造主に重ねているのでしょう?とんだマザコンですね。】


……っ。


【そんなノエルに1つだけ教えてあげますと、結果は変えられなくても…過程だけは変える事が出来るのです。上手くいけば残り1、2日の命を…5、6日に伸ばす事も。】


私は顔を上げた。


「本当!?」


【ノエルと数体しかいない竜達で死ぬ気で、この山岳地帯を守れれば…ですが。】


守れるか守れないかじゃない。少しでも延命出来る可能性があるなら、何であろうと食らいつく。その果てに…ザクトとギルウィさんを敵に回そうとも。


「ふざけんな」って…言った時から、私の旅の目的は定まっていた。


親の有り難みを忘れ、排斥しようとする連中を…どうしても、私は許す事が出来ない。


全知全能を持っているのに、特に何もせず、ただ死に逝くのなら…少女の代わりに私が『人類の敵』になってやる。


「ネガティブ終わり!!ここからはポジティブに…驕った人類を脅かす事を考えよう。協力してくれるよね?」


【え。私は別に協力とかはしませんよ?案内役兼解説役ですから。業務外な事はしません。】


はいぃ!?!?そこは協力する流れっしょ!!!!


【大陸の歴史的に、今日を含めて3日後…『人霊連合』がこの山岳地帯に攻め込んで来ます。なのでそれまでに、ノエルがどれだけ強くなれるかが…見ものですね。】



え?今日除いて…後2日しかないの!?



「急いで、鍛錬しなきゃ…まずは、山岳地帯を1周するぞ——!!!うおぉぉぉぉぉ!!!!」


まずは基礎体力を『精霊の森』にいた時くらいまでに戻す!!!そして、ウイから教えてもらったアレを…完成させさえすれば……勝ち目はある(かもしれない。)


色んな事を思考しながら、必死になって山岳地帯を爆走している時…ふと上を見上げると丁度、空に満月が浮かんでいた。

































































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